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「声を出していますか? 発声の大切さと楽しい実践方法」(視点・論点)

作業療法士 石田 竜生

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 皆さんこんにちは。介護エンターテイナーと名乗り活動をしている石田竜生です。
突然ですが皆さん、最近大きな声を出しているでしょうか?
新型コロナウイルスの影響で外出自粛が続き、当たり前に行っていたお友達とのおしゃべりや、地域の交流が出来なくなり、声を出す機会が大幅に減ってしまっているかと思います。

 僕は高齢者の皆さんと体操する際には、必ず「大きな声を出してもらうこと」を大切にしています。なぜなら、日常生活で大きな声を出す機会がなくなってくるからです。

 大きな声を出す時はどんな時でしょうか?夫婦げんかの時ですか?最近けんかすることも少なくなりましたよね。大笑いするときでしょうか?最近笑うことも少なくなってきたのではないでしょうか。
 子供は喜怒哀楽を感情のままに大きな声で表現しますよね。でも、人は歳を重ねるにつれて喜怒哀楽が少なくなり、感情が平坦になり、大きな声を出すことも少なくなっていくといわれています。

 また、声を出さないと口周りや口の中の筋肉や舌の動きも悪くなるので、食べ物をのどに詰まらせたり、誤えんの原因にもなってしまいます。
ですから体操をする際には、日常を忘れてみんなで大声を出し、気持ちのままに体を動かしてもらうことを大切にしています。

 大きな声で体操をしていると、あら不思議。自然と雰囲気が明るくなり、周りの人につられて声がどんどん大きくなって笑いに変わり、会場が爆笑に包まれる瞬間を何度も経験してきました。

 僕は「心が動けば体が動く」という言葉を大切にしています。人間は、喜怒哀楽もなく感情が平坦なままでは動こうとしません。「楽しい」や「興味がある」と思って初めて、「やってみよう」「挑戦してみよう」と行動を起こす生き物です。その心を動かす最初のスイッチが「声を出すこと」だと思っています。

 でも、外出自粛が続く今の時期は、声を出すこともできません。困りましたよね。
そこでこれから「大きな声を出しながら行ってもらいたい2つのこと」を紹介させていただきます。

 僕が講演で高齢者の皆さんに説明する時は、声を出して笑ってもらえるように、いつもこうやっておばあちゃんのカツラをかぶっています。さあ皆さんも一緒に体操をしてみましょう。

 まず1つ目は、「日常生活でも自然と声をだす習慣づけ」です。
例えばトイレに行く時に「1・2」「1・2」とかけ声を出して歩いてみたり、トイレまで何歩でいけるか、「123456・・あ、20歩で行けた」と数えてみてはどうでしょうか。

 椅子から立ち上がる時や、物を持ち上げる時に、あえて「よっこらしょ」と声を出してみる。実は声を出しながら体を動かしたほうが、より大きな力が出るとも言われています。
何事も運動だと思って、かけ声をだす習慣づけを行っていきましょう。ちょっとした運動も、声を出しながら行いましょう。

 例えば僕と一緒に、手をグーチョキパーと動かす体操をしてみましょう。手や指を動かすことは脳への刺激になりますし、座りながら簡単に出来ますので、テレビを見ながらでも出来る体操ですよ。

では一緒にグーチョキパーを作ってみましょう。
【体操】
グーチョキパー、グーチョキパー。大きな声を出して。早くしていきます。
このような簡単な体操でもいいんです。声を出しながら体操するだけで楽しい気分になってきませんか?

次はグーチョキパーの間に、1つ課題をいれてやってみます。課題を入れるだけで、さらに難しくなって脳への刺激になりますよ。間に手拍子を入れて、グーチョキ「パン」パーでやってみましょう。
【体操】
このようにすごく単純なグーチョキパーの体操も、間に手拍子などの課題を入れたり、スピードを早めたり、声を出したりするだけで難しくなり、体操もマンネリ化することなく長く続けられます。ポイントは、子供にかえったつもりで恥ずかしがらずに声を出して大きく動くことです。

「大きな声を出しながら行ってもらいたい2つのこと」、2つ目は「ながら運動」です。
ながら運動とは、その名の通り、何かをしながら運動を行うことです。
 歳を重ねると2つ以上の事を同時に行うことが出来にくい体になってきます。例えば歩いている時に急に後ろから話しかけられると、「歩きながらしゃべる」が出来なくて転倒してしまう。散歩しているときに自転車が飛び出してくると、「よけながら歩く」の2つのことが出来なくて転倒してしまうなどです。
ですから、日頃から2つ以上のことを同時に行う「ながら運動」を続けることで、転倒しづらい体づくりが出来ますし、脳の血流量が上がり、脳の活性化も期待出来るとも言われています。

「ながら運動」は難しく考える必要はありません。今日のテーマである「声を出すこと」
自体が一つの運動になっていますから、声を出し「ながら」何かすることで、2つ以上のことを同時に行う運動は、簡単に作り出すことが出来ます。
 洗い物をしながら「1212」と声を出してかかとを上げ下げする運動をする。好きな音楽をかけて、歌いながら掃除をする。友人と電話でしゃべりながら太ももの上げ下げ運動をする。これだけでも「ながら運動」になります。

では最後にちょっと難しい「ながら運動」を紹介したいと思います。グーパー運動をやってみたいと思います。前に出した手をグー、胸の手をパーにしてください。
「ハイ」と声を出しながら、この手を入れ替えます。
【体操】「ハイ、ハイ・・・」右と左で2つ違う動きをしている「ながら運動」です。

 もっと難しくしてみましょう。間に手拍子を入れて行います。
【体操】「ハイ、ハイ・・・」

 いかがでしょうか?なかなか出来ない方もいたかと思います。体操は続けないと効果は出ません。ぜひ続けて「毎日の習慣」にして頂ければと思います。

 今日は「声を出すことの大切さ」をテーマにお話させていただきました。皆さん、体操してみて何か楽しい気持ちになりませんでしたか?自粛生活が続き、周りに遠慮してついつい黙ってしまい、久しぶりに自分の声を聞いて驚いた方もいたかもしれません。でもこういう時こそ大きな声を出してみましょう。

 思えば、笑ったり怒ったり泣いたり、人間の感情表現は、まず「声を出すこと」から始まっていますよね。ガラリと変わった今の生活に疲れた時は「疲れた」と、みんなに会えずに寂しい時は「寂しい」と、イライラする気持ちを「コロナのバカヤロー」と、感情を声に出して表現してみるのもいいかもしれません。
また皆さんと「ワッハッハー」と大声を出して笑える日を心待ちにしています。
ありがとうございました。

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