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「ボランティアによる被災者支援の現状と課題」(視点・論点)

全国災害ボランティア支援団体ネットワーク 代表理事 栗田 暢之

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 全国に猛威を振るった台風19号から1か月以上が経過しました。犠牲となられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。これまでに16万人を超えるボランティアが、泥のかき出しや濡れた家財などの搬出、家屋の清掃などの活動をしています。一方で、NPOや企業、生協、労働組合といった民間セクターからも450団体が、避難所での支援や炊き出し、重機を使った土砂の撤去、災害廃棄物の運搬など、多岐にわたる活動を行っています。もとより、災害救援の柱となるのは行政ですが、こうした民間による支援活動も、とても重要な役割を担っています。災害発生から今日までを振り返り、今後さらに求められる支援について考えたいと思います。

今回の水害は、14都県にも被害が及ぶ「広域災害」となりました。当初は、あまりにも支援範囲が広く、109か所もの災害ボランティアセンターが開設されるなど、どこで活動すればいいのかさえ悩ましい状態でした。それでも、土日を中心に多くの支援が入り、現在は23か所となっていますが、その分、片づけなどが進められてきたということであります。一方で、2階まで浸水したり、家の中に大量の土砂が入り込んだりして、甚大な被害となった地域では、まだまだ泥かきなどのニーズも多く寄せられていて、引き続きボランティアの協力を求めています。全国社会福祉協議会では、ホームページに各地の災害ボランティアセンターの開設状況や募集範囲などを紹介しています。ぜひ、引き続きの支援をお願いします。

こうした泥出しや家屋の清掃を復旧の第一段階だとすれば、第二段階は、家と暮らしの再建といった課題に移り変わっていきます。家が浸水したということは、浸水した部分より下にあったものは、ほとんど廃棄しなければならない状態になるということです。過去の水害現場でも、多くの被災者が「生きるも地獄」という言葉をよく発せられます。つまり、災害直後は、「命は助かった」という安堵の気持ちでいっぱいになりますが、それも束の間、日を追うごとに、自宅などの圧倒的な被害を前にして、これからの生活再建に、いったいどれぐらいの時間と労力、そしてお金が必要になるのか、考えただけでも憂鬱になるということです。個々のボランティアとしては、第一段階の作業のお手伝いはできますが、それ以上のことはなかなか難しくなります。

一方で、昨今の災害では、専門性の高いNPOなどが、こうした不安に丁寧に対応しています。

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例えば、大量の土砂が流出し、とても人の手だけで取り除くことは不可能だという現場で、重機を使っての撤去作業をしたり、また、床下や浸水した壁などをはがし、断熱材までも取り出す作業をしたりしています。それは、浸水したままにしておくと、大量のカビが発生し、健康被害に及ぶことが懸念されるからです。できるだけ早く処置することが必要です。しかし、今回はあまりにも広域なので、こうした経験や技術を積み上げてきた「技術系」と言われるNPOの数にも限りがあります。そこで、被災した住民自身や大工仕事が得意なボランティアさんでも、こうした作業ができるよう「講習会」なども開催して、すそ野を広げています。昨年の西日本豪雨では、こうしたきめの細かい対応により、家のリフォームにかかる費用が数十万から数百万円軽減できたという事例もあります。

そして、地域によっては、こうしたハードの作業にもようやくめどが立ち、現在は一階の窓を全部開けて、床下を乾燥させながら、2階で暮らしている方々も少なくありません。こうした「在宅避難者」と言われる方々の、日々の食事はとても大きな課題となっています。「台所は浸水して使えないのでカセットコンロで代用している」「おにぎりやレトルトのものばかり」といった声も目立ちます。

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災害から1か月後に実施した炊き出しでも、「あったかいものを口にするのは本当に久しぶり」と涙を流された方もいました。被害は個々のお宅だけでなく、地域全体に広がっていますので、近所のスーパーや飲食店などもなかなか再開できていません。隣町まで買い物に出ようにも、多くの方は車も浸水して使えないので、移動手段も課題です。また、洗濯機も使えないので、コインランドリーを利用されたりしますが、やはりお金もかかるので、いつものペースのようにはいきません。

突然の災害で日常の暮らしが一変し、まだまだ暮らしの再建にもめどが立っていない中、せめて、ご近所同士など、お茶でも飲みながら、お互いの苦労を分かち合ったり、ちょっと一息したりする場が求められています。こうした地域コミュニティの場づくりに、NPOや社会福祉協議会などが協力をし始めています。

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茨城では、2015年の関東・東北水害での経験をもとに、「ぬくもりを届けるプロジェクト」として、炊き出しや足湯などを、公民館や集会所で実施しています。また、長野では、地元自治会、社会福祉施設、ボランティア関係者、県内外からのNPOらで、被災住民が気軽に立ち寄れる「サロン的な場をつくろう」と奮闘しています。

一方、災害救援の柱である行政は、それぞれの部局に課せられた責務を懸命に対応されてはいます。しかし、スピード感と被災者へのわかりやすい説明といった点においては、今後の課題と言えそうです。暮らしの再建には、国などによる各種の支援策は不可欠ですが、その前提として「り災証明」の発行が必要なこと、そして個々の被災に応じた、例えば「住宅の応急修理制度」「被災者生活再建支援金」といった、法や制度を活用していくことが重要です。しかし、こうした支援策は一般的にはあまり理解されていません。そこで、各地の弁護士会や司法書士会などの専門家が相談会を開催したり、さきほどの地域コミュニティの「場」を活用して、近所で困っている方が孤立していないかどうかなども確かめながら、すべての被災者にわかりやすく説明する努力を続けています。最終目的は支援の漏れがないようにすること。まさしく、官と民が連携して丁寧に取り組まなければなりません。
こうして被災地の現状を考えると、まだまだ至る所で「助けて」の声が聞こえてきます。しかし、「災害の風化」が邪魔をして、この声がだんだん全国に届かなくなってきたようにも感じます。今回は、広範囲に被害が及んでいて、被災地にはまだまださまざまな協力が
必要です。日本赤十字社に集められた義援金は10月末現在で約29億円ですが、昨年の西日本豪雨では241億円でしたので、あまりにも少ないと言わざるを得ません。こんなにも早く被災地が忘れ去られることがあってはなりません。動ける方は、ぜひ現地をめざしてください。お金で支援できる方は、義援金のほか、現地で活動するNPOなどへの支援金にもご協力ください。

今年8月、大雨に見舞われた佐賀県、台風15号で甚大な被害が出た千葉県、そして今回の台風19号による被災地では、復旧の途上のまま本格的な冬の到来を迎えます。「ボランティア元年」と言われた阪神・淡路大震災から間もなく四半世紀が経とうとしています。この間も様々な災害が発生し、そのたびに被災地にボランティアがいない現場はないといえるほど、その理解と期待は高まっています。災害は「お互い様」です。改めて、私たち一人ひとりにできるボランティア活動が求められています。

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