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「新社会人のための敬語」(視点・論点)

敬語講師 山岸 弘子

新社会人の姿をまぶしく感じ、心の中で声援を送る季節が巡ってまいりました。
社会人になると、折り目正しい態度や整った話し方が求められるようになります。
そこで今回は、改まったとき、困ったとき、お願いするとき、断るとき、おわびのときに使う言葉を取り上げます。職場によって求められる丁寧さは異なりますので、お手本となる先輩の言葉に耳を澄ませ、丁寧さのレベルは微調整していただきたいと思います。

まず、改まったときの言葉づかいです。改まったときとは、会議の席や、上司への説明、外部の人への説明を想定しています。

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このような場面では、「さっき」を「先ほど」と言い換えたり、「どう」を「いかが」、「どっち」を「どちら」、「今日」を「本日」、「きのう」を「昨日」、「おととい」を「一昨日」、「あさって」を「明後日」、「前から」を「以前より」「かねてより」、「すぐに」を「ただちに」「早急に」と言い換えたりします。

それでは、次の言葉を改まった場面にふさわしい言い方に言い換えてみましょう。
「たぶん、あさって入荷するみたいです」「午後はわりとすいているみたいです」「また電話します」「ざっくり言いますと」「ほぼほぼ問題ないと思います」「どうもすみません」「これからもどうかよろしくお願いします」こちらを改まった言い方に言い換えます。

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「おそらく明後日入荷すると思われます」「午後は比較的すいている様子です」「日を改めてお電話いたします」「概略を申しますと」「おおむね問題ないと思われます」「誠に申し訳ございません」「今後とも、何とぞよろしくお願い申し上げます」などと言い換えることができます。

次は、困ったときに使う言葉です。応対に困るような場面では、定着している表現があります。言いにくいことを言う場合には、ストレートな表現よりも遠回しな表現が使われます。たとえば、電話で相手の声がよく聞こえないときに使われるのは、「電話が遠い」という表現です。よく聞こえないとき、「大きな声ではっきり話してください」とストレートに伝えるのは好まれません。「大きな声ではっきり」という指示は、わかりやすいですが、明示的な指示は相手の気分を害する恐れがあるのです。
次のように言い換えることができます。  
「大きな声で話してください」「うっかり忘れてしまいました」「名刺がないんです」「できません」「参加できません」は、「電話が遠いようです」「失念してしまいました」「名刺を切らしておりまして」「いたしかねます」「参加がかないません」などと言い換えます。

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相手の気持ちに思いを馳せ、相手や場に配慮した言葉を選びます。
 
次に日常のビジネス会話における、依頼のとき、断るとき、おわびのときの話す順序と言葉についてお伝えします。
急いでいるときは別ですが、余裕のある依頼のときは、呼びかけ、前置き表現、本題、あいさつの順で行われることが多いようです。

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具体的には、「主任、いまお時間をいただけますか?お手数をおかけしますが、こちらの書類を確認していただけますでしょうか。よろしくお願いいたします」のように話します。

前置き表現とは、本題に入る前に前置きとして使われる表現です。「お忙しいところ申し訳ありませんが」「お手数をおかけしますが」などです。ビジネスマナーにおいては、クッション言葉と呼ばれ、言葉づかいの研修の際にも取り入れられています。前置き表現も状況に応じて、使い分けていきます。

お願いごとで、相手がその行為をしてくれることが前提の場合は、「恐れ入りますが」「お忙しいところ申し訳ありませんが」「お手数をおかけしますが」などが使われています。
相手に負担をかける場合には、「折り入ってお願いしたいことがあるのですが」「お手を煩わせて誠に申し訳ないのですが」など、相手の負担に配慮していることが伝わる前置き表現を使います。

次にお願いするときの具体的な言葉について触れてまいります。感じよく伝わり、相手にそのお願いを受け入れてもらえるような言葉を選びます。
相手にお願いするとき、特に外部の人と話すとき、「明日までにお返事をください」というような「ください」を使った言い方を避ける傾向がみられます。ビジネスマナーの研修においては、「ください」は命令形なので使ってはいけないという指導が行われる場合もあります。「ください」のかわりに重宝されているのが、「~していただけますか?」「~していただけませんか?」という言い方です。

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たとえば、「課長お忙しいところ申し訳ありません。ご報告がありますので、お手すきのときにお声をかけていただけませんか?よろしくお願いいたします」や、「課長、お手数をおかけしますが、こちらをご覧いただけますか」「課長、お忙しいところ恐れ入りますが、こちらをご確認いただけますでしょうか。よろしくお願いいたします」などのように使われます。「お声をかけていただけませんか」「ご覧いただけますか」「ご確認いただけますでしょうか」を使い、上司の意向を尋ねる形がとられています。

断るときにも前置き表現を使うと、断りがやわらかく伝わります。

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断るときの前置き表現としては、「あいにく」「折あしく」「せっかくのお誘いですが」「ありがたいお話ですが」「私にはもったいないお話ですが」「お断りするのは心苦しいのですが」などが使われます。
そして、前置き表現に続き「せっかくのお誘いですが、今回は都合がつかず参加がかないません」「大変ありがたいお話ですが、このような状況ですので、今回は遠慮させていただきたく存じます」などのように使います。相手を拒絶しているわけではないことを伝える目的で、「今回は」「このたびは」などと言う言葉を使います。

 最後は、おわびのときの言葉です。新社会人にミスはつきものです。自分のミスに気がついたらただちに報告し、上司に対処法を仰ぎます。その指示に従い、「ただちに先方へ連絡いたします」「早急に対処いたします」などすぐに対応することを伝えます。

そのあと、おわびの言葉+今後の心構えを伝えます。

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「この度は私の不手際でご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした」「深くおわびいたします」「心よりおわびいたします」という言葉の後に「二度とこのようなことがないよう注意してまいります」「同じ過ちをおかさないように今後十分注意いたします」「お言葉を肝に銘じ、気を引き締めて取り組んでまいります」などの言葉を添え、同じ過ちを繰り返さないという姿勢を伝えます。ミスを隠さず報告し、声や態度でも謝罪の気持ちを伝えることが信頼を得ることにつながります。

 言葉への意識を高めると、たくさんの言葉が心に届くようになってきます。気に入った言葉を書きとめたり、メールで使ってみたり、口に出して練習したりすることで、少しずつ社会人の言葉が身についていくことでしょう。


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