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「ラグビーワールドカップ2019 組分け決定」(視点・論点)

ラクビーワールドカップ2019組織委員会 広報戦略長 松瀬

日本でのラグビーワールドカップ2019まで、あと2年4カ月となりました。そのプール組合け抽選会が5月、京都迎賓館で行われました。参加20チームを4つのグループに分けるイベントです。
抽選会が、ラグビーの国際統括団体であるワールドラグビーの本部のあるアイルランド、ラグビー発祥の地のイングランド以外で開催されたのは初めてのことでした。これは、アジアで初めてとなるワールドカップに対する期待の表れです。イベントには、サプライズとして、安倍晋三総理大臣も出席されました。では、組分けを見てみましょう。

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組合け抽選会は、チームやファンにとっては大きな意味があります。プールの対戦相手が決まったことで、決勝トーナメントに向けた戦略づくりが始まったわけです。

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日本はA組、比較的恵まれたグループに入りました。アイルランドは過去にワールドカップ優勝経験がありません。フォワードとバックスのバランスのいい躍進のチームですが、日本にも勝機は十分、あります。
6月には、ルーマニアと、このアイルランドが来日します。ルーマニアとは熊本で1試合、アイルランドとは静岡と東京で2試合のテストマッチ、国代表公式戦があります。いわばワールドカップの前哨戦です。勝敗はともかく、相手の戦い方、長所、短所をつかんでほしいと考えています。
スコットランドは、日本と大きな実力差はないと見ています。ワールドカップでは過去3回戦って3回とも負けています。でも、圧倒されたことはありません。昨年のテストマッチも惜しい敗戦でした。
もちろん、どのチームも弱くはありません。日本と同じように、目の色を変えて強化してきます。プール戦で4戦全勝の可能性があれば、4戦全敗の恐れもあります。

ルーマニア、アイルランド戦に向けた日本代表のメンバーがこのほど、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチから発表されました。トータル33人です。前回のラグビーワールドカップ・イングランド大会後に代表から離れていたナンバー8のリーチ・マイケル選手が復帰しました。人気の五郎丸歩選手は今回は代表から外れています。
日本代表のワールドカップの目標は、ベスト8以上です。つまり、初めての決勝トーナメント進出です。開催国として、大会を盛り上げるためには、決勝トーナメント進出はマストでしょう。ベスト8といわず、準決勝、決勝にもいってほしい。個人的には、決勝で勝ってほしいのです。夢です。

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他のグループでいえば、前の日本代表のヘッドコーチだったエディー・ジョーンズさんが指揮をとるイングランドがハードなC組に入りました。過去、準優勝2度のフランス、前回ベスト4のアルゼンチンと同じグループです。
組分け抽選の時、久しぶりにエディーさんと話をしました。元気ですね。相変わらず、ポジティブでした。エディーさんは当然、優勝を狙っています。もうワクワクしてきます。
ファンも、大会のストーリーをつくりはじめたことでしょう。対戦カードや試合会場が決まるマッチスケジュールは9月に発表される予定です。組織委員会としては、これから、大会機運を盛り上げていかなければなりません。個人的には、日本代表のテストマッチはできるだけ多くのワールドカップの開催地でやってほしいと思います。
これから日本列島にラグビー熱を広げていくことになります。ワールドカップは全部で48試合です。日本戦だけでなく、すべての試合の会場を満員にすることが最大のテーマです。

あるシンクタンクでは、日本でのワールドカップの経済波及効果を約4200億円と試算しています。海外からは約40万人が日本にやってくるとみています。
前回イングランド大会の海外からの観戦者1人あたりの消費額は約34万円だったそうで、2012年のロンドンオリンピック大会の約21万円を大幅に上回っていました。
僕もですね、1987年の第一回大会からすべてのワールドカップを取材してきましたが、これまで開催地ではお酒などでたくさん、お金を使ってきました。地元経済への貢献です。

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ラグビーのワールドカップ日本大会の開催地は全国12カ所です。期間が2019年の9月20日から一カ月半です。2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、それぞれ約2週間、ともに東京中心です。何を言いたいのかというと、ラグビーワールドカップは期間が長く、エリアが広い。つまり、チーム関係者や観戦客らと、開催国の人々が交わるチャンスが大きいのです。

僕は前回のイングランド大会のとき、開催地のスタジアムの外に設けられたファンゾーンのにぎやかさに驚きました。パブリックビューイングに加え、飲み物、食べ物やグッズの購入ができるところです。日本大会でも、そういったファンゾーンで、地元の名物を味わえるようになるといいですね。
言ってみれば、ラグビーのワールドカップは、大きなお祭りですよ。みんなが祭りに参加して、盛り上がってほしい。法被の代わりに、ラグビージャージを着てわいわいやってほしいのです。
また公認チームキャンプ候補地に名乗りを上げた場所は全国で76カ所あります。来年の春ぐらいまでにどの国がどこでキャンプを張るのが決まっていくでしょう。サッカーの2002年ワールドカップのときのカメルーンのキャンプ地、大分の中津江村のように、ラグビーのワールドカップでもまちを活性化してほしいのです。

レガシー、いわゆる遺産づくりもポイントです。10年後、20年後を見据えたまちづくりにワールドカップを生かしてほしいのですね。
ラグビーワールドカップの翌年には東京オリンピック・パラリンピック大会があります。ワールドカップで訪ねたまちが気に入れば、東京オリンピック・パラリンピック大会に来た際、そのワールドカップのまちを再び、訪ねてくれます。リピーターになってくれるのです。
また忘れてならないのが震災からの復興です。
被災地の岩手県・釜石市、熊本県・熊本市も開催地です。ワールドカップで復興スピードをアップしてほしい。さらに、世界中に復興ぶりをアピールしてほしいのです。こんなに復興しましたよ、みんな元気になりました、応援してくれたみなさんありがとう、って。

国際交流も大事です。各開催自治体の経済界の人々は必ず、海外のチームや関係者と友達になるようにすればいい。子どもたちも、外国チームや観戦者と交流するチャンスを作るべきだと考えています。

我々のラグビーワールドッカップの大会ビジョンは、『コネクト、クリエイト、ゴー・フォワード』です。「絆、協創、そして前へ」です。
ことしから3年、ホップ・ステップ・ジャンプです。ことしはコネクト、絆のトシといえるでしょう。ワールドカップに向け、いろんなステークホルダーの人々と連携を密にして、準備をスピードアップしていくのです。
来年がクリエイト、協創、そして2019年がゴー・フォワードです。前へ、です。
開催自治体、キャンプ地の期待はおそらく、知名度アップ、経済効果、国際交流などでしょう。でも僕がひそかに期待しているのが、ラグビー文化の普及です。

ラグビーは謙虚なスポーツです。だって、ボールを前に投げたらいけないんですよ。相手が来たら、ごめんなさい、って、うしろにボールをパスするんです。試合が終わったら敵味方なしのノーサイド精神、周りを思いやるワンフォアオール、オールフォアワン精神です。ラグビー選手はチームメイト、仲間を大切にします。
僕はワールドカップをきっかけに全国の子どもたちにラグビーを好きになってほしい。できれば、ラグビーをやってほしいのです。タックルなしのタグラグビーでもOK、ラグビーをやる子どもが増えてほしいと思います。
そして、みんなが仲間になる。準備段階においても、大会が終わっても、一緒にスクラムを組んでほしい。

コネクト、クリエイト、ゴー・フォワードです。前へ、です。
ワンフォアオール・オールフォアワンです。
仲間づくりです。

ラグビーのワールドカップがやってきます。大きなお祭りが日本にやってきます。
僕は言いたいのです。
さあ、みんなでスクラム、組みましょう!

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