NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「アフリカを考える③ 国際社会とアフリカ」(視点・論点)

早稲田大学 教授 片岡 貞治

近年、着実に成長を続けるアフリカは、地上最後の巨大経済市場として、国際社会の耳目を集め続けています。かつて、欧州列強や国際社会の「客体」として翻弄され続けたアフリカが「主体」として国際社会に復権し、重要地域として認識されているのです。
今日、成長大陸としてのアフリカの魅力に惹かれ、1993年よりTICAD(東京国際アフリカ開発会議)プロセスを推進する日本や2000年からFOCAC(中国・アフリカ協力フォーラム)を喧伝する中国を始めとして、多くの諸国が独自の対アフリカ支援の為の外交的な対話の枠組みを創出し、競争状態を呈するに至っています。ちなみに、こうした外交フォーラムの先駆者はフランスで、1973年から2年ごとに「フランス・アフリカ首脳会議」を開催しています。
そうした中で初のアフリカ開催となったTICAD VIが8月27-28日にケニアで成功裏に終了し、アフリカ開発に対する日本の官民を挙げてのコミットメントやその歴史が世界中に知れ渡ることとなりました。TICAD VIを踏まえ、本日はアフリカと特に歴史的に関与し続けている主要国、とりわけ中国、米国、イギリス、フランスに焦点を当て、現在の主要国の対アフリカ戦略を精査していきます。

まず、中国です。近年の中国の積極的な対アフリカ関与は、世界的な関心事です。中国とアフリカの貿易額は、2013年には2000年の20倍の2100億ドルとなり、アメリカを抜いて、現在アフリカ最大の貿易パートナーとなっています。中国の対アフリカ政策の優先分野は、天然資源確保、貿易・投資と外交です。中国はアフリカとの関係において独自のモデルを確立しようともしています。中国は、インフラ整備を行う代償として、援助対象国から一次産品を受けとるのです。中国は、援助の対象となるアフリカ諸国に対して、道路、病院、大統領府、ガスパイプライン、電線などのインフラ整備を行い、その代金を資源で受けます。貿易では、多くのアフリカ製品(多くは天然資源)を無税で輸入しており、アフリカ全土に向けて工業製品を大規模に輸出しています。
中国の対アフリカ外交の中で、最も目覚ましいものの一つが、首脳外交です。1980年代後半以降、国家主席の訪問では、李先念が一度、楊尚昆が二度、江沢民と胡錦涛に至ってはそれぞれ四度。習近平は就任直後の2013年に訪問しており、2015年に二度目の訪問を果しています。また、中国の首脳外交のアクターが、国家主席、副主席、首相、副首相、外相等、他国と比べて複数であることも特徴の一つです。中国は、「世界最大の発展途上国」「発展途上国の代表」という特殊な地位を活かしながら、アフリカ諸国に関与するのです。
2000年に開始したFOCAC(中国・アフリカ協力フォーラム)の枠組みでアフリカに対して様々なプロジェクトを立ち上げています。

s160908_1.png

TICAD VIこれは、2015年12月にヨハネスブルグで行われましたが、主要インフラ整備、海洋シルクロード、産業化、環境問題、医療、職業訓練、軍事支援などです。さまざまな援助支援を表明しました。中国の対アフリカ政策を一言でまとめると「質より量」と「人海戦術」と言えます。
次に、米国です。米国外交において、アフリカが最重要課題として位置づけられることはありませんでした。冷戦構造の文脈で代理戦争の形でアフリカの親米国家に政治的かつ財政的に関与する程度でありました。1978年のカーター大統領の訪問を除くと、実質的な米国大統領のアフリカ訪問は、1998年に行われたクリントン大統領の訪問までまたねばなりませんでした。
そうした中で、オバマ大統領は、史上初のアフリカ系アメリカ人の大統領としてアフリカに4度も訪問しました。これまで、アクラにおける政策スピーチ、
「米国の対サブサハラ・アフリカ戦略」、「Power Africaイニシアティブ」(電力整備支援計画)など数々のイニシアティブを打ち出してきました。
更に2014年8月にはワシントンにアフリカの首脳を招待し史上初の米国・アフリカ・リーダーズ・サミットを開催しました。オバマの目的は、「世界一の経済大国と世界で最もダイナミックな成長を遂げている大陸との関係の強化」と米国とアフリカ関係に「新たなチャプター」を開くことにあったのです。
2015年のアフリカ訪問の際には、米国・アフリカ・ビジネス関係の更なる発展、ガバナンスの促進及び対テロ対策における協力関係の強化を推進しました。また、AU本部での政策スピーチでは、民主主義の擁護に関して、権力の座に固執するアフリカの大統領を明示的に批判したことで話題を呼びました。
次に、イギリスです。イギリスでは、長きにわたり、アフリカは「機会」よりはむしろ「問題」と見なされてきました。しかし、現在、「経済外交」重視の下に、経済成長が著しいアフリカ諸国との関係を強化しています。歴史的に保守党政権は、アフリカとの関係強化には消極的でありました。1997年に誕生したブレア労働党政権が、アフリカ重視に舵を切りました。DFID(イギリス国際開発庁)の格上げ、MDGsにおける貧困削減や貿易推進がその証左であります。キャメロン政権下では、緊縮財政で在アフリカの大使館の閉鎖を進めたものの、ODAの対GNI比0.7%を達成し、アフリカ向けODAを微増させ、アフリカへの経済外交に対するコミットメントやSDGsを達成させるための努力を継続させました。
しかし、現在抱える最大の問題はBrexitとその余波であります。EU離脱により、EUを通じた援助からイギリスは弾き出され、アフリカにおけるイギリスの影響力は大幅に低下する可能性が高いからです。
最後に、フランスです。フランスにおいて、一般的に「アフリカ」という言葉が発せられる時、人々は、無意識に、ケニアや南アフリカなどの「アフリカ」を排除し、コートジボワールなどの嘗ての植民地である仏語圏諸国を連想します。
フランスの対アフリカ政策は、植民地であったフランス語圏アフリカ諸国とフランスとの間に存在した緊密な友好関係を独立後も維持していくという政治的な意志に裏打ちされていました。また、必要に応じて、或いは現地の要請に応じて、様様な軍事介入も行ってきたのです。ちなみに、フランスは2011年以来、国連を巻き込みながら、リビア、コートジボワール、マリ、中央アフリカと4か国に対して軍事介入を行っています。
成長著しいアフリカ大陸全体に世界中の耳目が集まっている今日、こうした仏語圏諸国に限定した「アフリカ」に対する特有の見方も変わりつつあります。よりグローバルな視点でアフリカを捉え直すという考え方が支配的になってきています。即ち、英語圏諸国等を含むアフリカ大陸全体との関係を強化すべきというものです。事実、73年から行われている「仏・アフリカ首脳会議」も近年は仏語圏諸国以外の首脳の姿も目立ちます。  
フランスは、政治的には仏語圏諸国との関係を維持しつつも、2014年のオランド大統領の南アフリカ訪問に見られるように、経済的には英語圏諸国等との関係も強化するという戦略を策定しようとしています。フランスも21世紀における新たなアフリカとの関係、即ちアフリカ大陸全体との関係の強化を模索しているのです。
成長著しいアフリカでありますが、1次産品の価格下落、エボラ出血熱やHIV/AIDSなどの感染症の拡大や蔓延、イスラム過激派武装集団の跋扈、内戦の勃発など多くの課題に常に直面しています。
こうした課題への対応には国際社会のサポートが必要です。現在の成長サイクルを永続化させ、アフリカが掲げる開発イニシアティブAgenda 2063(The Africa We Want)(ちなみに、Agenda 2063への積極的な支援を表明しているのは、日本だけ)を達成するためにも、アフリカ諸国は、眼前のチャンスを掴まなければなりません。
そのためには、独自の対アフリカ戦略を掲げる主要国を始めとした国際社会もありとあらゆる面でアフリカ諸国の成長を側面からサポートしていかなければならないのです。

キーワード

関連記事