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博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー 原田曜平
 
今、「ぼっち」と「リア充」という若者を表す言葉が話題を呼んでいます。
「ぼっち」という言葉なんですけれども、これはひとりぼっちの略です。今の若い人達は友達関係を過剰に重視するようになっていて、特にひとりぼっちになることを嫌がるということで話題を浴びていますと。若者がいかにひとりぼっちを嫌っているかを示す言葉として「便所飯」という言葉も話題になっています。これは「ランチメイト症候群」とも言い、ランチを食べる相手がおらず、ひとりぼっちでいることを周りに見られるのが嫌な若者が、お弁当箱をトイレに持ち込んで一人で食べるという変わった現象で、様々な大学などで見られるようになっているようです。一方、この「ぼっち」とは間逆に近い言葉として「リア充」という言葉も注目を浴びています。このリア充とは、リアルつまり現実の生活が充実している人のことを指す掲示板の、インターネット掲示板の2ちゃんねる発祥の言葉です。簡単に言えば、異性も含めたたくさんの友達と楽しそうに生活している若者のことを「リア充」というようになっているんです。これは「リア充」になれない人の「リア充」の人達への嫉妬からできた言葉という風に言われています。

まず今日は、今の若者達が「ぼっち」を嫌い「リア充」に憧れる理由をまずご説明したいと思います。今の若い人達は平均すると中学3年生で携帯電話を持ち始め、そこから携帯電話のソーシャルメディアを介し、たくさんの人間と繋がっていきます。昔であれば仲良し3人組でずっと朝から晩まで行動する、などということも中学時代はあったと思うんですけども、今は、例えば中学時代、同じクラスのいじめっこもいじめられっこもギャルもおたくもヤンキーもガリ勉も、つまり違ったタイプの者同士もソーシャルメディアを介して繋がります。加えて同じクラスどころか同学年の多くの子とも繋がり、そればかりか上の学年、下の学年の子とも繋がります。また中学を卒業し高校に入ると、中学時代と同じように同じクラス、同学年、上の学年、下の学年、更に言えばバイト先や部活の遠征先で出会った子とも繋がるようになっているんですと。つまり今の若い人達はライフステージが上がるごとに人間関係が広がっていくんですけれども、同時にかつての人間関係と繋がったままなので、どんどんどんどんソーシャルメディアを介し人間関係が広がっていると、しかもずっと繋がるような状態になっているということです。

私は2010年に光文社から『近頃の若者はなぜダメなのか携帯世代と「新村社会」』という本を出版しましたけれども、この本の中では、この若者達がソーシャルメディアで非常に繋がっていて、時に息苦しい人間関係を過ごしていることを「新村社会」という風にネーミングしています。つまり昔日本にあったような、出る杭は打つであったり、陰口がすごく広がるであったり、あるいは人に合わせなきゃいけないっていう同調圧力、そうしたものがこの新村社会には、またふたたび復活してしまっているということです。この新村社会では人間関係の多さであったり、あるいはコミュニケーション能力というものによって人間関係の序列が決まるので、前述したように、「ぼっち」であるということが非常に嫌われて、多くの友達がいて、その友達と楽しく過ごしている「リア充」タイプの若い人達が非常に尊敬されるようになっているんです。これだけ聞くと、「ぼっち」の若者をいかに減らし、「リア充」タイプの若者を増やすということが非常に必要のように思われますけれども、私はむしろ逆に、いかに「リア充」の若者を減らし、「ぼっち」の若者を増やせるかということが、今の時代の若者達にとって大変幸せに繋がる重要なことだと思っています。

例えば、あるカップラーメンの広告では、この「リア充」がモチーフに使われています。「リア充」の充が獣と書いてですね、それで代用されているんですけども、「リア獣」という名前の動物が人間を襲ってくるというCMなんですけれども、みんな「リア充」にならなきゃいけないという同調圧力が強いということを描いているので、「リア充」が自慢をするわけですね、彼女の手料理最高ですとか、僕は40時間忙しくて寝ませんでしたみたいなことを自慢すると。一般のその襲われた人間達がフェイスブックなどで「いいね」を押してしまうように、ついついいいねと言ってしまうと、そういうCMなんですね。
ところが最後に一人の男の子が「俺は最後まで絶対にしない、ほんとに思った時しかいいねをしない」という風に叫ぶんですね。この広告が私は今の若い人達の心の声を代弁しているように思います。つまり「リア充」をほんとに楽しめている若者は非常にごく一部で、多くの若者達は、このいわば同調思考ですね、「リア充プレッシャー」に押されていて「リア充」を演じなくてはいけない、あるいは「リア充」の友達に「いいね」とボタンを押さないといけない、そういうプレッシャーがあるのが現状で、ほんとで言うと、そんなことしたくないと思っている若者達も非常に多いという現状にあるように思います。
そう考えると、もちろん「リア充」タイプの若者のように色々な友達と上手く接することも非常に社会を生きていく上でのスキルとしては重要なことですけれども、むしろこうしたプレッシャーが、同調圧力が多い中、一人で楽しめる、「ぼっち」という状態を自然体でできる状況を増やしてあげることが今の若者達にとっての幸せに繋がるんではないかなという風に私は思います。

ここ数年、事実若者に限らず、おひとりさま向けサービスとして、“ひとり焼き肉”であったり、“ひとりカラオケ専門店”などのお店ができ、メディアで多くの注目を呼んでいますと。ところが、けっこう前からですね、この「リア充」同調圧力に怯えない、ひとりぼっち状態を楽しむ若者達が実は、一人行動っていうのをもう既に行っているんですね。例えば、“ひとりディズニーランド”というのが今、一部の若者の間で流行っています。これはですね、みんなでディズニーランドに行ってしまうと集団行動を取らなきゃいけなくて、この時間にパレードを見に行かなきゃいけない、この時間にお土産を買わなきゃいけない、非常に拘束力が強いので、本当は自分の好きなディズニーランドの楽しみ方をしたい、つまり「リア充」タイプのディズニーランドの楽しみ方をしたくないと、「ぼっち」タイプのディズニーランドの楽しみ方をしたいという子達が一人でディズニーランドに行って楽しむというケースが増えてるんですね。
それから、“ひとりカラオケ”というのもですね、専門店に限らず普通のカラオケボックスに一人で行く若者達というのが非常に今増えています。今の若い人達は先程言った通り「リア充」同調圧力が強いので、みんなでカラオケに行ったら、例えば嵐であったりAKBであったり、みんなが知ってる曲を入れなきゃいけないという、すごくプレッシャーが強くなってるんです。ところが強烈に好きな歌手が、それがマニアックな場合もありますけれども、いる子達は一人でですね、カラオケに行って自分の好きな曲を楽しんでエンジョイするというような現象がもう既に起きてきているんです。最近では、「ぼっち充」という言葉もできてきました。つまり、さっきのリアル生活を充実する「リア充」とは逆で「ぼっち」を楽しむ「ぼっち充」、ぼっち充実ですね、という言葉もできてきました。

これはつまり、一人行動を楽しめる若者達が非常に「リア充」に対抗する言葉として増えてきたということが言えると思います。
 
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実際こちらのデータを見ていただきたいんですけれども、これは博報堂生活総研の
生活定点2010調査というものなんですけれども、“一人で外食をすることに抵抗はない方だ”という20代の人は52.2%いて、他の3~40代、5~60代よりも高い数字となっています。
それから、“趣味や遊びは人と一緒にやるより、一人でやるほうが好きだ” “一人で過ごす時間を増やしたい”というのも3~40代、5~60代よりも高い数字となっています。

このようにですね、多くの20代が他の年代よりも一人行動を楽しむようになってきているという現象も出てきていますと。人間関係を広げ、数多くの、そして様々な種類の若者達と接することを教えてあげることも大切ですけれども、そこで苦しんでしまっている若者も非常に多い現状なので、どれだけ若い人達に「ぼっち充」を増やしてあげるかということが我々大人や社会の責任なのではないでしょうか。

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