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"空白は解消„石垣島に自衛隊駐屯地

田中 泰臣  解説委員

沖縄県の石垣島に陸上自衛隊の駐屯地が開設されました。その意義と課題は?

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Q)地図を広げて確認していますね。

A)南西地域ではすでに沖縄本島をはじめ宮古島、与那国島などにも駐屯地があり、防衛省はこれで空白状況が解消され防衛基盤が整ったとしています。

Q)車両がありますが何が配備されるのですか?

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A)艦艇などからの攻撃に対処するミサイル部隊が配備されます。石垣島自体はもちろん、島から170キロの距離にある尖閣諸島周辺も射程に収め、島々の防衛にも資するものと言えます。
ただ地元では歓迎の声の一方、敵の標的になるのではと反対の声もあがっています。特に今回配備される12式地対艦誘導弾というミサイルをめぐり懸念が強まっています。

Q)どういうことでしょうか?

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A)防衛省はこのミサイルを改良して射程を伸ばし、相手の領域内の基地も攻撃できる「反撃能力」にも活用しようとしています。
開発中で配備先は決まっていないとしていますが、地元では「結局それも配備されるのではないか、そうなれば島が狙われる危険が増すのでは」との声が出ていて、市議会は「反撃能力を持つミサイルの配備は容認できない」との意見書を可決し政府側に提出しました。
石垣島では太平洋戦争末期、多くの住民が旧日本軍の命令で強制的にマラリアが発生する島の山間部などに避難させられて犠牲になっており、同じことを二度と繰り返したくないという思いも背景の1つにあると思います。

Q)過去の歴史からも複雑な感情があるということですね。

A)防衛省は来週、住民説明会を開くことにしていて「備えをすれば相手が攻撃を思いとどまる抑止力が高まる」という常に言っているスタンスで臨むと思います。ただそれでは割り切れない住民が少なからずいることも踏まえ、懸念を払しょくするように可能な限り具体的な説明が求められるのではないでしょうか。


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田中 泰臣  解説委員

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