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インボイスなくてもフリーランスと取り引き

竹田 忠  解説委員

消費税の新たなルール、インボイス制度をめぐって、
企業が新たな方針を表明する動きが出ています。
竹田忠解説委員に聞きます。

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【インボイス制度が始まるのが今年10月。あと7か月となりました。】

今回、特に影響を受ける可能性があるのが
フリーランスや自営業の人たちで、今、大きな選択を迫られているんです。

【どういうことなんでしょう?】

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たとえば、このカバン店がバッグを売って客から消費税3000円をもらった。
店側はこの3000円をそのまま納税するのか、というと、そうではありません。

なぜならこのバッグをこのフリーランスの人から仕入れた時に
店は消費税2000円を払っています。
なので、もらった3000円から、払った2000円をひいた、
1000円を納税すればいいんです。

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しかし、今年10月からは
インボイスという消費税の正確な証明書を合わせて出してもらわないと、
店側はこの差し引きができなくなるんです。
そうなると店は客からもらった3000円をそのまま納税することになる。
店側は損をするため、この人との取引を打ち切って
インボイスを出せる事業者に乗り換えるかもしれない。

【なぜ、インボイスが出せないんですか?】

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フリーランスの多くは、売り上げが1000万円以下の免税事業者で、
消費税を納めなくていい。納めてないので、インボイスが出せない。
インボイスを出せるようになるには、
消費税を納めないといけない課税事業者になる必要がありますが
そうすると負担が増えてしまう。

どちらを選ぶべきか、多くの人が悩んでいるわけですが、
そういう中で、いやいや、取引はこれまで通り続けますよ、大丈夫ですよ、
という企業があらわれた。
具体的には日頃から大勢のフリーランスに業務を発注している7つの会社と団体が、
インボイスがなくても、フリーランスとこれまで通り取引を継続する、
という表明を相次いで行いました。

【なぜそういう表明を?】

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これはフリーランス協会の呼びかけに応じたもので、企業側にすれば、
柔軟に働ける大勢のフリーランスの人たちと取引が維持できないと、
多くの事業が成り立たない、という背景があるものと思われます。

立場の弱いフリーランスの人たちがシワ寄せを受けないよう、
政府としても、企業側のこうした動きをもっと後押しすべきだと思います。


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竹田 忠  解説委員

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