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トルコ・シリア大震災 急がれる国際支援

出川 展恒  解説委員

トルコ南部のシリア国境近くで発生した大地震から、27日で3週間です。余震が相次ぐなどして、被害が広がっていて、国際社会からのいっそうの支援が求められます。
出川解説委員です。

Q1:
犠牲者の数などが、日を追うごとに増えていますね。

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A1:
はい。これまでに、トルコとシリア合わせて5万人以上が犠牲になり、13万人以上が負傷したと伝えられます。ただ、両国の政府は、行方不明者の数を発表していませんし、その後も余震が相次ぎ、被害の拡大が懸念されます。食料、水、燃料、電気といった、生きてゆくうえで不可欠なものが全く足りず、厳しい寒さの中、避難生活を送る人たちの健康状態が悪化しています。けがや病気の人々、高齢者、乳幼児、妊娠中の女性などが、必要な治療やケアを受けられず、非常に心配です。

Q2:
国際社会からの支援も、十分ではないのですね。

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A2:
ええ。とくに食料や毛布が不足し、多くの人々の命が危険にさらされていまして、緊急に届ける必要があります。衛生状態が悪化し、手を洗うための清潔な水もなく、コレラなどが流行するおそれがあります。また、トルコだけでも、190万人以上が家を失ったとされ、速やかに仮設住宅を作らなければなりません。合わせて、支援活動の障害ともなっている大量の瓦礫を取り除く必要があります。

Q3:
内戦が続くシリアは、さらに支援が難しいようですね。

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A3:
はい。シリアは10年以上続く内戦で、国土が荒廃し、国民の多くが国際社会からの支援に頼っていたところに、今回の大地震が追い討ちをかけました。
アサド政権との関係が悪化していたアラブの国々が、苛酷な状況を見かねて、支援の手を差しのべていますが、いぜん深刻なのは、反政府勢力が支配するシリア北西部の一帯です。WFP・国連世界食糧計画などが、国境を接するトルコ南部から陸路で食料などを運び込んでいるものの、必要な量には程遠い状況です。国連を中心に、アサド政権の協力も得ながら、支援を大幅に加速する必要があり、そのための資金の確保も極めて重要な課題です。


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出川 展恒  解説委員

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