ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の開始から1年となるのを前に、アメリカのバイデン大統領は、訪問先のポーランドで演説しました。髙橋解説委員とお伝えします。
Q1.
バイデン大統領が手にした写真はウクライナのゼレンスキー大統領とのツーショット?
A1.
ときに行動は言葉よりも雄弁にその人の決意を物語ります。「ロシアがウクライナで勝利することは決してない」そう言い切ったバイデン大統領。演説に先だち、ウクライナの首都キーウを自ら電撃訪問した姿は、軍事侵攻を正当化するロシアのプーチン大統領に断固対抗する決意を鮮明に印象づけました。かつて東西冷戦下の西ベルリンで自由世界の結束を説いたジョンFケネディ。ベルリンの壁を壊すよう呼びかけて冷戦終結への道筋を拓いたロナルド・レーガン。そうした歴史的なスピーチを彷彿させました。ただ、行動にはリスクも伴います。
Q2.
どういうリスクですか?
A2.
ロシアとの全面対決のリスクです。プーチン大統領は、年次教書演説で米ロの核軍縮条約=新STARTの履行停止を一方的に主張し、欧米による武器供与の拡大を強くけん制しています。バイデン大統領が、ゼレンスキー大統領が求める戦闘機の供与には慎重なのも、ロシアとの偶発的な衝突リスクを高めかねないからでした。ウクライナへの軍事支援の強化は、アメリカ国内でも、政治的リスクを伴います。
Q3.
政治的リスクとは?
A3.
バイデン大統領が再選に意欲を見せる来年のアメリカ大統領選挙です。共和党から立候補が取りざたされているフロリダ州のデサンティス知事は、際限のない支援継続に懐疑的な見方を示しています。最新の世論調査では、ウクライナへの武器供与を支持する人は、去年5月の60%から現在は半数を割っています。戦闘の長期化に伴って“支援疲れ”の兆候は否めません。
「プーチン大統領はひと言でこの戦争を終わらせることができる」と述べたバイデン大統領。しかし、戦闘終結につながる具体的な戦略は語りませんでした。
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