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"ペットの看護師さん"愛玩動物看護師 初の国家試験へ

土屋 敏之  解説委員

◆ペットの看護などを担う新たな国家資格の初めての試験が行われる

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19日日曜、全国各地で「愛玩動物看護師」の第1回国家試験が行われます。これは獣医さん=獣医師の補助的な役割をする言わば「ペットの看護師さん」の新資格です。人間の医療だと医師も看護師も国家資格ですし獣医師も国家資格ですが、「動物の看護師」にはこれまで民間の資格しかありませんでした。ペットも高齢化が進んだり獣医療が高度化・多様化する中でより重要な役割が求められるなどとして農林水産省と環境省が所管する国家資格になり、今回の試験で初めて誕生します。

◆これまでの民間資格との違い

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例えば犬や猫へのマイクロチップ装着や採血など、これまで獣医師しか行えなかった業務の一部をその指示の下で行えるようになります。また近年コロナ禍でペットにいやしを求める人も増える一方で、犬や猫が増えすぎて世話しきれなくなる「多頭飼育崩壊」などの問題も起きていますが、愛玩動物看護師にはこうした飼い主への助言などの役割も求められます。
幅広い知識を身につけるため受験資格は本来、大学などで3年以上学ぶことが求められますが、新制度への経過措置として、既に実務経験がある人などは講習会や予備試験を経て受験資格が与えられるため、今回の受験者はおよそ2万人にのぼる見込みです。
  
◆今後の課題

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国家資格になったことでその受験資格を得られる大学や専門学校の人気も上がっていると言われますが、関係者が期待する動物看護職の処遇・賃金などが上がるかは未知数です。
また獣医師については、近年相次ぐ鳥インフルエンザや豚熱への対応などで地方の保健所など公衆衛生や家畜を診る獣医師が不足しているのに対し、大都市のペットクリニックなどはむしろ増えすぎとも言われ、獣医師の偏在が課題になっています。
愛玩動物看護師がこのペット医療の方を支えることで、獣医師は獣医師にしかできない仕事にシフトが進むのか?国がビジョンを示していくことも求められます。


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土屋 敏之  解説委員

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