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新海誠監督「すずめの戸締まり」 ベルリン国際映画祭へ

高橋 俊雄  解説委員

世界3大映画祭の1つ、ベルリン国際映画祭が、現地時間の16日に開幕します。
ことしは、新海誠監督のアニメーション映画「すずめの戸締まり」が、最優秀作品賞に当たる「金熊賞」を競うコンペティション部門にノミネートされています。

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■世界3大映画祭に初めて出品
ベルリン国際映画祭は、カンヌ、ベネチアと並ぶ世界3大映画祭の1つで、ことし、73回目を迎えます。
そのコンペティション部門に世界各地の実写映画とともにノミネートされたのが、新海誠監督が原作と脚本も務めたアニメーション映画「すずめの戸締まり」です。
「君の名は。」「天気の子」に続く最新作で、去年11月に公開が始まったあと、今月5日には観客動員数が1000万人を超えました。
新海監督の作品が世界3大映画祭に出品されるのは、今回が初めてです。

■新海監督「災害は切り離せない」
物語の根底にあるのは、東日本大震災です。
主人公は幼いころに震災を経験した「鈴芽」という名の女子高校生で、災いの元となる「扉」を閉めるため日本各地を巡ります。
主人公の冒険や成長、それに細やかな風景描写といった、エンターテインメントの要素を盛り込みながら、扉のすぐ向こう側にある災いについて考えさせられる作品になっています。

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去年12月、宮城県を訪れた際にNHKのインタビューに応じた新海監督は、「今の日本を舞台にした物語を書こうと思ったとき、災害は切り離せない。自然に、どうしても考えてしまうというのが正直なところです」と語っています。
一方で、東日本大震災で直接被災したとは言えない自分に何ができるのかという葛藤や、この作品がどう受け止められるのかという不安な胸の内も明かしています。

■「海外の観客にどのように映るのか 確かめる好機」

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新海監督はノミネートが決まった時、「この映画が海外の観客にどのように映るのか、なにが伝わり、なにが伝わらず、なにを共有し得るのか。それを自身の耳目で確かめる好機をいただけたと考えています」とコメントしています。
日本のアニメーション映画がベルリン国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされたのは、2002年の宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」以来、21年ぶりで、この時は最優秀の「金熊賞」を受賞しています。
新海監督の「すずめの戸締まり」はどのような評価を受けるのか。金熊賞などの発表は、現地時間の今月25日の予定です。


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高橋 俊雄  解説委員

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