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年収の壁 どう見直す?

竹田 忠  解説委員

パートで働く主婦などのいわゆる年収の壁について、岸田総理大臣が制度を見直す考えを表明しました。担当は竹田忠解説委員です。

Qこの絵は壁を越えるかどうか迷っているという感じですか?

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そうなんです。なぜそうなるかというと、
配偶者に扶養されている専業主婦などの場合は
年金や医療などの社会保険料を本人は負担しなくていいんです。
しかし、パートなどで年収が増えると払わないといけない。
具体的には従業員101人以上の会社で働く場合は年収106万円で、
その他の会社でも130万円で負担が発生する。
すると、その分手取りが減って、労働時間をかなり伸ばさないと
“働き損”になるので、壁を超えないように働く時間を抑える、
つまり就業調整をする人が増えるわけです。

Qどれくらい働く時間が減ってるんですか?

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これについて問題指摘している野村総研によりますと、
パートの時給はこの20年で3割上がった。
しかし、なぜか年収はほぼ横ばいのまま。
なぜなら、働く時間が逆に2割減ったためだと。
つまり賃上げすればするほど、就業調整によって
人手不足が深刻になる。

Qどうすればいんですか?

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そこで先日、国会で議論されたのが
この手取りが減る分を国が給付金を出して穴埋めしてはどうかと。
すると壁を越えやすくなる。
ただ、この対象になるのは扶養されている人たちですから。
単身で働いている人たちからみると、不公平だ!ということになる。

Qじゃー、この壁をもっと年収の高い所に移して、
保険料を負担しなくていいようにしたらどうでしょう?

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A
それは、国が進めている改革に逆行します。
国はできるだけ多くの短時間労働者が社会保険に入れるよう、
もっと年収の低い所に壁を移したいんです。
それが全世代型社会保障の考えなんです。

ですから、まず必要なのは、最近企業が相次いで
パートの時給を大幅に上げて話題になっているように、
保険料をチャンと払って老後の備えを厚くしながら働けるように、
もっと企業が賃上げできるよう、
後押しすることが重要だと思います。


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竹田 忠  解説委員

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