致死率の高い鳥の病気、「高病原性鳥インフルエンザ」が全国的に拡大しています。その結果、卵の値上がりに加えて、「別の影響」も取りざたされています。
どういうことなのでしょうか。
Q.鳥インフルエンザが発生したというニュース、連日のように聞きますね。
A.そうですね。去年10月に発生したあと、年が明けてもほとんど途切れることなく全国各地で発生が続いています。
発生するとまん延を防ぐため、その農場で飼っている鳥はすべて殺処分しなくてはなりません。今シーズンに入って1月25日までの間に、処分の対象になった鳥の数がどのくらいかというと、およそ1179万羽に上ります。その数、過去最多です。
対象となった鳥は、ほとんどが卵を産むニワトリです。このため、卵の供給が減って値上がりを招いています。
Q.さらに「別の影響」というのはどういうことですか?
A.それは野村農林水産大臣が、1月17日の会見で述べた内容が関係しています。
野村大臣は「今からは小玉よりも大玉が出てくると思います」と述べたんです。
Q.「大玉」ですか?
A.これには伏線があります。農林水産省は、1月10日、業界団体に対して、ニワトリの飼養期間の延長などを要請する異例の通知を出しました。
ニワトリの数が減っているので、少しでも長く飼って卵を多く供給してもらいたいということです。ただ、ニワトリは飼う期間が長くなると産む卵がだんだん大きくなる傾向にあります。それで大臣は「大玉が増える」という見方を示したんです。
Q.大玉というと、たとえばLLサイズのような卵が増えるということですか?
A.養鶏関係者に聞きますと、飼う期間が長くなると卵の殻が割れやすくなったり、産卵の間隔が少しずつ延びたりするので、実際は大幅な延長は難しいとのことです。ですから、ものすごく増えるということはなさそうです。
むしろ、大臣の発言からは、「こんなに苦しいお願いをするほど卵の確保に苦慮している」という状況を読み取るべきではないかと思います。
Q.卵は毎日の食卓に欠かせないという人が多いと思います。十分買えなくなってしまうとすごく困りますので、そこが一番気になります。
A. 農林水産省や養鶏関係者にその点を聞きますと、「家庭向けの卵の量は心配ない」という見方をしています。
それでも小売価格のほうは、農林水産省の調べでは、1月、10個で244円と平年より13%上昇しました。卸売価格はもっと大きく上がっています。
また、加工用の原料は品薄になって、北海道の菓子メーカーが看板商品の生産を減らすと発表し、影響が現実化しています。
鳥インフルエンザは例年ですと春には収まりますが、専門家の間では「今シーズンは長期化する」という見方が強く、そうなると高値傾向は続く可能性があります。
今後、一定の発生を前提にして、それでも卵を安定的に供給するにはどうすべきか、対策を考える時期に来ています。
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