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外国人旅行者数は回復も まだ晴れない視界

佐藤 庸介  解説委員

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去年1年間に日本を訪れた外国人旅行者は推計で383万人余りと、政府が新型コロナの水際対策を大幅に緩和したことなどから、前の年の15倍以上に増えました。一方で、コロナの動向もあり、回復が続くか不透明な面もあります。背景や課題をお伝えします。

Q.政府が水際対策を緩和してから、まだあまりたっていないのではないかと思います。それから急に回復したということですか。

A.そうです。

日本政府観光局の発表によりますと、去年9月がおよそ21万人でしたが、政府が水際対策を大幅に緩和した10月以降、毎月増えて、12月には137万人に達しました。これは「急回復」と言っていいと思います。

とくに増えたのが韓国からの旅行者です。2019年の同じ月と比べて、12月がプラス84%と、すでにコロナ前より大幅に多くなっています。2019年は日韓関係悪化の影響で旅行者が減っていましたので、その点を割り引く必要はありますが、それでも目立つ数字です。

12月には台湾、香港やタイなどアジア地域からの旅行者も、おおむねコロナ前の半分くらいに戻っています。

Q.ということは、日本の観光業界にはいま、かなり追い風が吹いているということですね。

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A.たしかに回復のさなかではありますが、そう単純ではありません。

依然として減ったままなのが、中国です。12月も2019年より95%の減少でした。

中国は今月、それまでの厳しい水際対策を見直し、旅行者数の増加につながるとみられていましたが、中国の感染状況を受けて今度は日本政府が対策を強化しました。

コロナ前は、中国が外国人旅行者数の3割を占めていました。加えて消費額がとても多く、大きな経済効果をもたらしていたことも重要なポイントです。

Q.たしかに一時は「爆買い」と言われましたよね。

A.実際、観光庁の調べでは、2019年、1人あたりの旅行支出は外国人旅行者の平均より大幅に多いおよそ21万円に上りました。とくに買物代は、主な国や地域の中で、群を抜いて最大でした。一方で、これと比較すると、たとえば韓国人旅行者の支出は3分の1くらいにとどまりますので、簡単に穴埋めはできないというのが現実です。

旧正月の「春節」に合わせた大型連休が始まるこの時期、「コロナさえがなければ、旅行者が増えるはずなのにあてが外れた」と思う関係者も多いかもしれません。

とはいえ、外国人旅行者の増加で、新型コロナの感染が拡大するという事態は避けなくてはなりません。

本格回復の条件が整ったあかつきには、需要を取り込めるよう、今のうちに十分、準備を整えておくことが大事になります。


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佐藤 庸介  解説委員

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