領土の奪還を目指すウクライナに対して、欧米がより攻撃性の高い“主力戦車”の供与に傾く中、ドイツの姿勢に注目が集まっています。
Q1.なぜドイツが注目されるんですか?
A1.ウクライナが最も強く求めているのが、ドイツ製の主力戦車レオパルト2だからです。主力戦車は、強力な火力と突破力を持つ地上戦闘のまさに中核です。中でもレオパルト2は世界最強戦車のひとつに数えられ、NATOでは最も多くの国が採用しています。これが供与されれば、領土を奪還する大きな力になるとウクライナは期待しているんです。そこで、ポーランドとフィンランドが自国のレオパルト2を供与すると表明しました。しかし、それには製造元のドイツの承認が必要なんです。
Q2.イギリスも戦車の供与を発表しましたね。
A2.はい。「我々も決断したのからドイツも決断を」というシグナルだと思います。
イギリスは欧米で初めて自国の主力戦車チャレンジャー2を14両供与すると発表しました。ただ、実際の軍事作戦では、それだけでは足りず、100両単位の“数”が必要です。これがNATOの多くの国が保有するレオパルト2なら、各国が分担して供与すれば、かなりの数がそろいますし、それぞれの負担も少なくて済みます。関係国の間ではこの手法について議論も始まっています。欧米は当初、ロシアを刺激し過ぎないよう武器の供与には慎重でしたが、もはや、そうした空気はありません。NATOやEUのトップなどからもドイツの承認に期待する発言が相次いでいます。
Q3.ドイツはどうするのでしょうか?
A3.ショルツ首相は、歩兵戦闘車など一歩踏み込んだ支援を表明したばかりですが、より強力な“主力戦車”となると、事態の悪化を懸念しているからか、いぜん慎重な姿勢です。折しもドイツ国内で20日、欧米をはじめ関係国の代表が集まって
ウクライナへの軍事支援について話し合う会合が開かれます。ここでドイツは戦車の供与についてどのように表明するのか。その決断はウクライナの今後の戦況を左右することになると思います。
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