北欧のスウェーデンとフィンランドは今年中にもNATO・北大西洋条約機構への加盟をめざしています。しかし、トルコが難色を示し加盟に立ちはだかっています。
Q.イラストではスウェーデンがNOを突き付けていますね。
スウェーデンの最高裁判所は先月、トルコへのジャーナリストの引き渡しを認めない判断を下しました。この人物はトルコの新聞社の外信部長や編集長を務め来日経験もある亡命中の男性で、トルコ政府は2016年のクーデター未遂事件に関わった疑いがあるとしての男性の引き渡しを求めています。これまでスウェーデンは、トルコ政府が加盟承認の条件とするクルド人武装組織PKK・クルド労働者党などと距離を置きテロリストの引き渡しに協力することを約束し、先月はじめPKKのメンバーを引き渡しました。さらにトルコの国名をめぐっても配慮が見られます。
Q.国名で配慮ですか?
はい。トルコ政府は英語の国名を七面鳥と同じTurkey(ターキー)ではなくTurkiye(トゥルキエ)に変更するよう各国に要請しており、スウェーデン政府はいち早く応じました。
Q.それなのに今回はなぜ引き渡しを認めないのですか?
トルコではクーデター未遂事件に関連しておよそ5万人が一斉に拘束されたり公職から追放されたりしました。スウェーデン最高裁はジャーナリストの身柄を引き渡せば政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあると判断したもので、クリステション首相も今月8日、「トルコはできないことまで要求する。すべてに応えることはできない」と述べました。
Q.そうなるとNATO加盟が難しくなるのではないですか。
はい。スウェーデンは伝統的に迫害から逃れて来た人々を難民として受け入れ、国内のクルド人は10万人に上ると言われます。安全保障のためとはいえそうした人々を危険にさらすことは人道上問題があり、譲歩すべきでないという声も多く聞かれます。一方、トルコのエルドアン大統領としても大統領選挙を控え、簡単には妥協できません。フィンランドもスウェーデン抜きで単独で加盟はしないとしていますが、新規加盟にはNATOに加盟する30か国すべての承認が必要で、トルコがいつまで強硬姿勢を続けるのか、欧米全体の安全保障にかかわる懸念材料となっています。
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