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厳冬の戦い ウクライナが年明け大規模作戦か

津屋 尚  解説委員

厳しい冬を迎えたウクライナでは、ロシア軍が年明けに大規模な攻撃を仕掛けてくるとの憶測も流れています。年を越して続く戦争はどうなっていくのか。国際・安全保障担当の津屋尚解説委員にききます。

Q1. ウクライナの戦争はついに年を越してしまいそうですね?

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A1. はい。年明けの冬の戦闘は一層激しくなるかもしれません。ロシアの同盟国ベラルーシには、ロシア軍の戦車部隊などが徐々に国境付近に集結していて、2月の侵攻開始の時のように、再びベラルーシから侵攻し、首都キーウを攻撃するのではという観測がウクライナ軍幹部などから出ています。

Q2. ベラルーシから侵攻する狙いは何ですか?
A2. 戦いの主導権を握っているウクライナ側への揺さぶりだと思います。ウクライナ軍の領土奪還作戦は東部と南部で進んでいるので、ロシアは、北部から侵攻することで、ウクライナ軍の兵力を分散させて相手の攻勢を弱めたいのでしょう。

Q3 ロシアの思惑通りに行くでしょうか?

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A3. 答えはNOです。開戦の時とは違ってウクライナ側は事前に備えることができますし、ロシア軍の士気も戦闘能力も低いままです。ロシア軍自身、兵力不足が続く中、限りある戦力を東部に集中させて戦っているのに、自ら北部にも戦線を広げることは、合理的な判断とは言えません。そう考えると、これはウクライナ軍を撹乱するための一種の“情報戦”で、実際には侵攻しない可能性もあります。

Q4. ウクライナ側はどう出るのですか?

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A4. ウクライナとしては、厳しい冬の間にロシアに戦力を回復するいとまを与えず、領土の奪還を進めたいところです。というのも、兵士の戦闘服一つとっても、ウクライナ軍がNATOから最新の冬用装備を提供されているのに対して、ロシア兵の装備はかなり貧弱です。ここ1か月余り、ウクライナ軍の大きな前進はないので戦闘は膠着しているように見えますが、ウクライナ軍が次の作戦に備えて戦力を温存し、攻撃のタイミングを計っているという見方もできます。年明けに大規模な攻撃に出るのは、実はウクライナ軍の方かもしれません。だとすれば、その戦いは非常に重要なものになると思います。


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津屋 尚  解説委員

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