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ウクライナ侵攻で揺れる中央アジアと日本が外相会議 背景と思惑

安間 英夫  解説委員

中央アジア5か国と日本の外相会議があす(24日)東京で行われます。
中央アジアの国々は、同じ旧ソビエトの国だったロシアによるウクライナ軍事侵攻をひとごとでない問題と受け止め、揺れ動いています。

Q)中央アジアの地図が描かれているのはチェス盤ですか。

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A)
中央アジアを含むこの地域は、歴史的にも大国の思惑が交錯するゲームの場としてチェス盤に例えられ、「The Grand Chessboard=壮大なチェス盤(米政治学者・元政府高官 ブレジンスキー氏)」という言い方もされました。
中央アジアと呼ばれる国々は、31年前ソビエト連邦の崩壊で独立したカザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの5つの国です。
北はロシア、東に中国、南にアフガニスタンやイラン、西にトルコに囲まれ、特にロシアは勢力圏と位置づけてきました。
ところがウクライナ侵攻は、ロシアが旧ソビエトの国に攻め込んだ実例となり、同じ中央アジアにとってひとごとではなく、警戒感を強めロシアとの距離感を見直さなければならなくなったのです。

Q)そうした中であす(12月24日)東京で外相会議が開かれるのですね。

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A)
この会議は「中央アジア+日本」という枠組みで、2004年に日本の主導で始まりました。
その後、EUやアメリカ、中国、ロシアも同じようなかたちで枠組みを発足させるようになっています。
「中央アジア+日本」外相会議が日本で開かれるのは10年ぶりで、5か国の外相がそろってみな日本に集まるのは初めてとなり、それだけ今回の会議への期待が高いのでしょう。
外相たちはきょう(23日)、岸田総理大臣を表敬する予定です。

Q)どんなことが焦点ですか。

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A)
やはりロシアによるウクライナ侵攻に対する対応です。
中央アジア5か国は、国連総会のロシアを非難する決議では棄権、または欠席の対応をとり、ロシアへの非難を避けました。
これは、他国への侵攻は容認できない一方、ロシアと決定的な対立は避けたいというバランス感覚が働いたためです。
このため今回の会議では、ロシアに直接触れないながらも、国際法の原則、他国の領土を侵略してはならないという点では一致し、合意文書に盛り込むことができるのではないかとして、調整が続けられています。
これはロシアや中国に向けたメッセージになると思います。

Q)期待されることはどんなことでしょうか。

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A)
ロシアと中国は大国意識や野心を隠しきれないのに対し、日本はこれまで経済発展を目指した人材育成など地道な支援を行い、野心のない、より対等なパートナーとして信頼関係を築いてきました。
中央アジアと日本の関係強化は、双方にとって外交の選択肢を増やします。
またロシアや中国に、中央アジアが日本になびいてしまうかもしれないと感じさせ、双方の存在感を高めることにつながります。
このようにウクライナ情勢とあわせ、中央アジアの動向にも注目していく必要があります。


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安間 英夫  解説委員

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