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東京都"太陽光パネル義務化"背景と影響

土屋 敏之  解説委員

◆東京都が全国初となる新築住宅への太陽光パネル設置義務化などを盛り込んだ条例改正

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東京都は2030年までに温室効果ガス半減をめざしていますが、現状特に建物でのエネルギー使用によるCO2排出が多いとして打ち出された対策のひとつです。大手住宅メーカーおよそ50社に対し、2025年度以降に新築する住宅に太陽光パネルの設置などを求めています。ビルやマンションに限らず戸建住宅まで対象にした義務化は、欧米の一部地域で既に導入されていますが、日本では国が去年検討したものの見送られていて東京都が初となります。

◆住宅メーカーへの義務

家を買う個人ではなく建てるメーカーに、それも大手に限定した義務化というのが特徴です。条例では、北向きの屋根や日当たりの悪い立地などは無理に設置しなくても、そのメーカーが建てる住宅の合計で決められた発電量を確保すればよいとしているので大手の方が対応しやすい面があります。
ただ、メーカーの義務とは言っても結局は住宅価格に転嫁されて消費者の負担になる懸念がありますが、都の試算では電気代が減ることや売電収入を得られることで設置費用は10年で回収できるとしています。また災害などで停電した時も電気が使えるメリットもあります。

◆こうした制度は他の地域にも広がっていきそう?

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この仕組みは大手企業が集まる東京ならではのところがあって、隣接する神奈川県川崎市で同様の制度を検討していますが、中小の工務店などが多い地方ではそのままの制度化は難しいと見られます。
一方で、家の屋根の活用は再エネ導入に適した土地が限られる日本でも有効な手段ですし、ウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機で、国は原発の運転延長や建て替えまで打ち出していますが、都の条例は「エネルギー確保」と「脱炭素」を両立させるにはこんな手段もあるのでは?と一石を投じた面もあって、今後議論が進むきっかけになるかもしれません。


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土屋 敏之  解説委員

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