アフガニスタンで実権を握るイスラム主義勢力タリバンが今月、公開処刑を行ったことが明らかになり、国際社会からは強い非難の声が上がっています。
背景について解説します。
Q)
公開処刑とはショッキングですね。
A)
タリバンは旧政権時代にも、競技場など公の場で、処刑やむち打ちなどを行っていたことで知られていて、当時も国際社会から強い非難の声が上がっていました。
ただ、去年再び政権の座に着いて以降、公開処刑を行ったことが明らかになったのは、今回が初めてとみられます。
Q)
イラストで、耳をふさいでいるのはタリバンの関係者ですか。
A)
はい。国際社会からの非難に耳を傾けようとしない最高指導者のアクンザダ師を例えたものです。
今回対象となったのは、男性を刺して殺害しバイクなどを奪ったとされる男で、今月7日に西部ファラー州で処刑されました。
男は調べに対して犯行を認めていたということで、事件についての判断は、裁判所での審理を経て、最終的にはアクンザダ師に委ねられました。
そして、タリバン独自のイスラム法の解釈に基づいて、殺人への「報復」として処刑が承認されたということです。
しかも、被害者の父親みずからが銃で処刑を行い、暫定政権の幹部も立ち会ったということです。
国連は直ちに「残虐で非人間的だ」と非難しました。
Q)
非難されるのはわかっていたはずではないかと思いますが、どうして公開処刑を行ったのでしょうか?
A)
アフガニスタンの厳しい国内事情を見る必要があると思います。
タリバンが復権して1年以上が経ちますが、欧米などが、タリバン側が女性の権利を守るかどうかなどを見極めようとしている影響で、アフガニスタンへの支援は停滞し、国内の経済も悪化、食料不足も深刻です。
こうした状況に国民の不満はくすぶり、政権運営は行き詰まりをみせています。
タリバンとしては、「報復」を名目にした公開処刑を行うことで、みずからが理想と掲げるイスラム法に基づいた統治を進め、「治安を維持し、安定を確保しているのだ」と国民にアピールする狙いがあったとみられます。
このように統治を改めて正当化するとともに、国内の引き締めも図ろうとしたのだと思います。
しかし、国際社会との溝は広がるばかりで、さらに孤立を深めることにつながらないか懸念されます。
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