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カツオ漁に新たな国際規制 背景と影響は

佐藤 庸介  解説委員

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太平洋中西部のカツオの資源管理を行っている国際機関が、11月28日から12月3日にかけて開いた会合で、早ければ再来年からこの海域での漁に新たな国際規制を導入することを決めました。

Q.どうしてカツオ漁に新たな国際規制を設けることになったのでしょうか?

A.中西部の太平洋でカツオの漁獲量がものすごく増えているからです。

カツオというと、たたきやカツオ節など和食で使われる魚という印象があるかもしれませんが、世界的には缶詰の需要が高まっています。今やインドネシアや韓国、アメリカといった国に加え、パプアニューギニアやキリバスなど太平洋の島国も続々、カツオ漁に乗り出しています。

その結果、漁獲量が急増して、2019年には過去最多の204万トンに上りました。その量、20年で2倍近くに上っています。

日本の沿岸で操業するカツオの漁業者からは「とりすぎでカツオが少なくなった」との声が根強く、日本の漁業関係者の間では「厳しく規制しないと取り返しがつかなくなる」という危機感が広がっていました。

Q.そんなに漁獲量が増えているんですか。それでは今回決まった規制は具体的にどんなものなのでしょうか。

A.とても複雑で分かりにくいのですが、大きなポイントは「カツオが一定の量より減った場合、船が操業する日数を少なくしたりして、取りすぎを防ぐ」ということです。

具体的に言いますと、国際機関に加盟している26の国と地域が、親となるカツオの量について、漁業がなかったと仮定した場合の「50%前後」は保つようにするということ。そして、それが「40%」より減った場合は操業日数を減らすといった対策を講じるということです。

去年の推定ではカツオの量は「54%」だったということで、この水準であれば、今すぐに何か対応する必要はありません。

Q.規制が導入されたといっても、私たちが食べるカツオが急に手に入らなくなるわけではないということですね。

A.そうです。むしろ、そうならないように備えをしたということです。

ただ、今回、合意したのは、規制の大枠にすぎません。カツオが少なくなったときにどの国がどれだけ操業日数を減らすのかなど、具体的な内容は来年の会合で話し合います。

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太平洋の島国の中には、自国の排他的経済水域で、自分の国だけでなく海外の船も操業させることで「入漁料」を得て、国の財政を支えているところが多く、厳しい規制には抵抗感があります。先進国の操業や自国水域の外での操業を強く規制すべきだと主張して、交渉は難航する可能性もあります。

世界的に消費が増えているとはいえ、日本はなお世界最大のカツオの消費国です。カツオ節は和食には欠かせませんし、刺身やたたきは食卓を豊かにしてくれる貴重な存在です。

カツオを守りながらずっと食べ続けるために、日本政府は率先して交渉をまとめる役割を果たさなくてはなりません。


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佐藤 庸介  解説委員

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