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欧州エネルギー危機 ガス価格高騰を抑えられるか

二村 伸  専門解説委員

ロシアのウクライナ侵攻後、未曽有のエネルギー危機に見舞われているEUで、ガス価格の高騰をおさえるため価格に上限を設けるかどうか激しい議論が続いています。

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Q.イラストではガスに蓋をしようとしているようですが、厳しい表情も見られますね。

ヨーロッパではことし8月、天然ガスの価格が1Mwh(メガワット時)あたり340ユーロまで上昇しました。過去10年間の平均価格の10倍以上です。そこでEUの内閣にあたるヨーロッパ委員会は、ヨーロッパの天然ガス価格の指標であるオランダTTFの先物取引の価格に上限を設け、1Mwhあたり275ユーロとすることを提案しました。しかし、イタリアやポーランドなどは基準となる価格が高すぎると上限を設ける意味がないとして160ユーロ前後に下げるよう求めています。一方、ドイツやオランダなどは上限を設けること自体に反対しています。

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Q2.なぜ反対なのですか。

上限を超える価格での取引が禁止されると業者はEU以外の国に販売することになり供給不安を招きかねないというのがその理由です。また、価格を下げ過ぎると需要が増えすぎて安定供給が困難になるといった指摘もあります。EUはロシア産原油の輸入を禁止し、国際的な取引も1バレル60ドルの上限を設けることで合意しました。天然ガスについては13日にもエネルギー担当相の臨時会合を開いて上限設定で合意にこぎつけたいとしており、議長国チェコは264ユーロを提案しています。ただ、各国の意見の隔たりは埋まっていません。

Q3.冬も近づいていますから決着が長引けば市民生活にも影響を及ぼしかねませんね。

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原油やガスの価格高騰の恩恵を受けるロシアに対し、EUはガスの共同購入や不足時に加盟国間で融通しあうことなどを決め、価格の上限設定で合意できれば次は消費量の15%削減に踏み切る方針です。ガスの需要が高まる冬を乗り切り、来年以降のエネルギーの安定供給に道筋をつけられるかどうかは、各国が国益に走らず協調できるかにかかっています。


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二村 伸  専門解説委員

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