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"プラスチック汚染防止条約"へ交渉開始

土屋 敏之  解説委員

◆プラスチックに関する国際条約を作るための初めての政府間交渉が行われている

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南米有数のビーチリゾート、プンタ・デル・エステに11月28日から12月2日まで、世界160か国以上の代表が集まって、海洋プラスチックなどによる汚染の防止を目的にした政府間交渉を行っています。
今回は第1回ということで、まず議長の選出や事務手続きが中心ですが、今後交渉を重ねてめざす「ゴール」は、プラスチックの生産から消費、廃棄までのライフサイクル全体を対象にした法的拘束力のある国際約束、つまり条約などを作ろうというものです。

◆世界的に広がるプラスチック汚染

近年、世界でプラスチックの消費量が加速度的に増えたことで、大気や海に流出するプラごみや小さなマイクロプラスチックも急増しているとされます。このままでは、2050年には海洋プラスチックが魚の総重量を超えるとの予測もあり、既に大気や飲み水からもマイクロプラが検出され、将来の健康リスクも懸念されます。
日本でも4月からプラスチック資源循環法が施行されて、使い捨てプラの抑制に取り組んでいますが、大気や海はつながっていますから世界全体での対策が必要で、今年の国連環境総会で、2024年までに条約策定の交渉を完了するよう決まりました。

◆“プラスチック汚染防止条約(仮)”実現への課題

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温暖化対策と同様、プラスチックの規制は各国の産業や私たちのくらしにも影響します。一方で温暖化と比べプラスチック問題ではまだ科学的データが不足していて、どの国からどれだけ流出しているかなどもはっきりしていません。そして、これまで先進国が多くのプラ製品を生産してきたのに対し、途上国では適切なごみ処理を行う資金や技術が不足し、その支援も必要です。
こうした利害の違いを越えて共にゴールを目指せるのか?それは同時に、大量消費・大量廃棄のライフスタイルを世界全体で変えていけるか?が問われているとも言えます。


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土屋 敏之  解説委員

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