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ソウル雑踏事故 日韓関係は?

出石 直  解説委員

ソウルの繁華街イテウォン(梨泰院)で大勢の若者が犠牲になった雑踏事故では、政府や警察の対応に批判が高まっていて、日韓関係への影響も心配されています。
出石 直(いでいし・ただし)解説委員です。

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Q1、岸田総理大臣が心配げに見守っていますが。

A1、本当に痛ましい事故でした。
事故の4日後には、自民党の麻生副総裁が急きょソウルを訪問してユン大統領と会談しています。日韓関係を重視するユン政権になって韓国政府の日本に対する姿勢は大きく変わりました。日韓関係は今、重要な局面を迎えていて、ユン大統領が今回の危機を乗り切れるかどうかに日本政府は関心を寄せているのです。

Q2、しかし韓国との間には徴用をめぐる問題が残されていますよね。

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A2、その通りです。ユン大統領は日本企業に賠償を命じた「韓国最高裁の判決」と、この問題は「完全かつ最終的に解決した」とする「日韓請求権協定」の間に挟まれて難しい判断を迫られています。
この問題を解決するためには、韓国国内から一定の反発を受けることも覚悟で、思い切った政治決断をする必要があります。
一方、野党側は今回の事故で政府の責任を厳しく追及する構えをみせています。事故をきっかけに世論の支持が離れると、そうした決断をするのが難しくなるのではないかと、日本政府の関係者は警戒しているのです。

Q3、事故の後、ユン大統領の支持率も下がってきているのですか?

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A3、今のところ事故前に較べて1ポイント落ちただけです。
ただ8年前、大勢の修学旅行生が犠牲になったセウォル号沈没事故では、当時のパク・クネ大統領の支持率がわずか2週間で11ポイントも下がり弾劾罷免につながりました。ユン大統領もひとつ対応を誤ればその二の舞になりかねません。
岸田総理大臣は、一連の首脳会議に出席するため今週、東南アジアを訪問する予定で、ユン大統領との日韓首脳会談も検討されています。
ユン大統領が今回の危機を乗り切れるかどうかは今後の日韓関係をも左右することになりそうです。


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出石 直  解説委員

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