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国際観艦式20年ぶりの開催その意義は

田中 泰臣  解説委員

海上自衛隊が20年ぶりとなる国際観艦式を神奈川県沖で行います。

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Q)岸田総理大臣、真剣な眼差しで見ていますね。

A)観艦式の目的は、自衛隊の最高指揮官である総理大臣が部隊を実際に見て隊員の士気を高めるものです。概ね3年に一度行っていて、総理が乗船する護衛艦とすれ違うように艦艇が航行します。

Q)「国際」と銘打つだけに、外国の艦艇が多くいますね。

A)「西太平洋海軍シンポジウム」という会合に合わせて、30の加盟国が持ち回りで開催しているものを「国際観艦式」と言います。3年に一度行っているものより規模が大きく、日本では20年ぶりの開催で、親善を深めるのも目的です。このうち注目されるのが韓国の参加です。

Q)なぜでしょうか?

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A)観艦式をめぐる、いきさつがあるからです。4年前、韓国で行われた際には、韓国政府が自衛隊の艦艇に掲げる「旭日旗」は戦前の軍国主義を想起させるなどとして掲揚を認めず、日本は参加を見送りました。3年前は日本側が日韓関係の悪化を背景に招待せず、今回、参加の是非が注目されました。
ユン・ソンニョル政権は、日本との関係改善に意欲的な上、かつてないほど軍事的な挑発を続ける北朝鮮に強い姿勢で臨む方針です。参加の背景には北朝鮮をにらみ、こうした機会も逃さず日本やアメリカと連携を強化したいとの思いがあると見られます。

Q)一方、中国の艦艇は遠くにいますね。

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A)今回、艦艇は派遣せずシンポジウムのみに参加する予定です。理由は明らかではありません。防衛省幹部の1人は「海は陸や空に比べて外国の艦艇と遭遇する機会も多く、偶発的な衝突を避けるためにも関係を断ち切らないのが重要」と言います。中国艦艇が周辺で活動を活発化させている今こそ、少しでも機会があるのならば、意思の疎通を図ることは重要と言えそうです。


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田中 泰臣  解説委員

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