投票日まで3週間を切ったアメリカの中間選挙で、ウクライナ支援にはどのような影響が出てくるでしょうか?髙橋解説委員とお伝えします。
Q1)
けさのイラストはバイデン大統領の執務室。ウクライナのゼレンスキー大統領が心配そうに身を乗り出しているのはなぜですか?
A1)
野党・共和党で下院トップのマッカーシー院内総務が、ウクライナ支援の見直しを示唆する発言をしたからです。今度の中間選挙で、共和党が議会の主導権を握ったら、バイデン大統領に「ウクライナに対する白紙の小切手はもう切らせない」と言うのです。
Q2)
支援を止めてしまうということ?
A2)
さすがに支援を打ち切ることはないでしょう。ただ、規模の縮小や優先順位の低下はあるかも知れません。
軍事と国民生活のいずれを優先するべきか?そうした議論では、“大砲かバターか”という喩えがよく使われます。アメリカ・ファーストを唱えるトランプ前大統領を支持する共和党議員らの一部には、「ウクライナに供与する大砲よりも、物価上昇で生活が苦しいアメリカ国民のバターに、予算をもっと振り向けるべきだ」という意見が根強いのです。
次の下院議長をめざすマッカーシー院内総務の発言も、そうした意見を反映しています。
Q3)
選挙情勢はどうなっている?
A3)
選挙戦が最終盤に入り、下院は今のところ共和党が優勢を保っている一方で、上院は、民主・共和両党の勢力が拮抗し、どちらが多数派になるかわかりません。
バイデン政権の発足以来、アメリカはウクライナに対して、軍事と経済それに人道支援を合わせて少なくとも600億ドル=日本円でおよそ9兆円規模の拠出を表明しています。
ウクライナ側の防衛は、そうしたアメリカによる手厚い支援に支えられてきましたから、予算の先議権を持つ下院で、仮に共和党が多数派になったら、戦況にも重大な影響が出てくるかも知れません。
これまで大砲とバターの両立をめざしてきたバイデン大統領。今度の中間選挙で、アメリカによるウクライナ支援は、ひとつの転機を迎える可能性をはらんでいます。
(髙橋 祐介 解説委員)
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