自民・公明両党は防衛力の抜本的な強化に向けた協議を開始しました。協議で何が焦点となるのでしょうか。
Q)両党で綱引きでしょうか。綱が2本ありますが?
A)相手の領域内の基地などをたたく「反撃能力」の保有。そして防衛費の増額。
協議では、この2つの議題で両党の主張がぶつかり、綱を引き合う場面がありそう
です。
Q)反撃能力では何が焦点になりますか?
A)行使の要件と反撃する対象だと思います。政府は従来から、自衛隊に武力行使が認められるのは相手が攻撃に着手した時としています。つまり何をもって着手されたとみなし、これまで想定してこなかった相手の領域内での攻撃を可能とするのか。またどこまで反撃する対象に含めるのか。保有で抑止力を高めたい自民党は、なるべく限定したくないでしょうし、保有に慎重な意見も根強い公明党は、認めるなら「歯止め」として厳格化を主張すると見られます。基本理念である専守防衛ともかかわってくるだけに注目です。
Q)防衛費は規模や財源に注目でしょうか?
A)自民は今の倍、11兆円ほどとなるGDP比2%目標を念頭に引き上げ5年以内に強化したい。公明は「額ありきではない」との立場です。財源については、公明から法人税の増税も選択肢との意見も出ていて、麻生副総裁、北側副代表はじめ両党の幹部が協議会のメンバーに名を連ねたのは、難しい政治判断が必要になる可能性があるためと言えます。ただ防衛費については、その範囲をめぐる議論も注目を集めるかもしれません。
Q)範囲というのは?
A)政府内から、今は含まれていない海上保安庁などの予算も防衛費に含めるべき、有識者会議では空港や港湾も安全保障上の資産になり得るとの声が出ています。範囲を広げれば実際の増額幅をその分低く抑える根拠ともなり、防衛力強化との兼ね合いでどうなのか議論となる可能性もあります。一方で野党などからは「軍拡競争に陥るのでは」という懸念も出ていることから、それらも踏まえた議論が進んでいくのかも注目です。
(田中 泰臣 解説委員)
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