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「国葬」めぐり国会質疑 法的根拠は?費用は?

曽我 英弘  解説委員

安倍元首相の「国葬」をめぐり、国会では8日午後、岸田首相が出席して衆参両院で閉会中審査が行われる。

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議論のポイントは、「国葬」を直接定めた法律や基準がない中、時の政権の判断で行うことをどう考えるかだ。戦後唯一の首相経験者の国葬だった1967年の吉田茂元首相の際も、吉田氏を政治の師と仰ぐ当時の佐藤栄作首相の強い意向で今回同様、閣議決定によって行われたが、その法的根拠をめぐって議論を呼んだ。岸田首相は今回、内閣府が所管する「国の儀式」として行うとしているが、野党側は「政治利用だ」などと批判している。また「国葬」の実施が表明されてから2か月近く国会への説明も関与もないまま、準備が進められたことには疑問や反発もある。

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費用が最終的に一体いくらになるのかという点も議論になっている。政府は6日、警護や外国要人の接遇も含めると16億6000万円程度を見込んでいることを野党側の求めに応じる形で明らかにした。これは8月、政府が支出を決めた会場設営費などおよそ2億5000円の6、7倍で、最終的な金額は国葬後に精査して示すとしている。これに対し野党側は費用がさらに膨らむ可能性もあると疑問視し、「小出しに公表して小さく見せようとしている」と反発している。

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「国葬」をめぐる世論は割れ、反対も多い。今後の行方は岸田首相の説明に理解と納得が得られるか次第だが、安倍氏の政治的評価が分かれ、旧統一教会との関係への波紋の大きさなども考えると、世論を大きく変えるのは簡単ではない。一方で野党側も国葬に出席するかどうか、すでに明らかにしている党がある一方で、岸田首相の国会での説明などを見極めたいとして態度を保留している党もあるなど対応に苦慮していることもうかがえる。安倍氏の死去から8日でちょうど2か月。説明を尽くし、議論を深めることで政治が責任を果たすかどうか注目したい。

(曽我 英弘 解説委員)


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