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霊感商法等の検討会 今後の焦点は?

今井 純子  解説委員

いわゆる霊感商法などへの対策を話し合う消費者庁の検討会が、今週発足しました。長年、社会問題となっていた被害について、効果的な対策を打ち出せるのでしょうか。今井解説委員。

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Q)委員が指さしているのは、多額の献金ですか?
A)はい。これが焦点のひとつです。
この霊感商法。弁護士連絡会によると、この5年で500件以上、54億円を超える相談が寄せられています。以前は、高額なつぼや印鑑を売りつける手法が主でしたが、最近は、多額の献金や寄付を強要し、経典などを授ける形に変わってきていると言います。「もの」などを売りつける霊感商法については、2018年の消費者契約法の改正で、十分とはいえないまでも、取消権が盛り込まれました。でも、献金や寄付については、ほとんど対策がとられてこなかったからだ、という指摘があがっています。

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Q)なぜ、対策がとられていないのですか?
A)献金や寄付を「契約」として規制できるのか。「信教の自由」との関係でどう考えたらいいのか。整理されてこなかったからです。
この点について、専門家や弁護士などの委員からは、
▼ 献金をする。そして、経典などのプレゼントをもらう。それをあわせて「契約」ととらえることができないか。
▼ 目的を隠して勧誘したり、不安をあおるなど、自由な意思決定ができない状態にしているのではないか。
▼ 信教の自由といっても、なんでも許されるのではなく、制限があるのではないか。
▼ 消費者問題として、解散命令も議論の余地があるのではないか。
このように、幅広い観点からの問題提起が相次ぎました。

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Q)被害を抜本的に防ぐ対策につなげてほしいですね。
A)そう思います。ただ、新たに法律で規制するとなると、具体的にどう線引きするか、簡単ではありません。また、河野消費者担当大臣は、「消費者庁の枠を超える部分についても、政府に提言をしていく」と話していますが、その場合、他省庁などの連携が得られるか、政府全体の本気度が問われることになります。
検討会はオンラインの公開の場で開かれるだけに、私たちも今後の議論に注目していきたいと思います。

(今井 純子 解説委員)


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