NHK 解説委員室

これまでの解説記事

サンマ漁にも日ロ関係悪化の影が

佐藤 庸介  解説委員

Q サンマ漁が始まり、水揚げのニュースも耳にしました。そのサンマ漁に気がかりなことがあるというんですか?

C220826_3.jpg

A そうです。それは日ロ関係悪化です。
サンマはいま、北海道から東に1500キロほど離れた海域に漁場ができています。ここはおおやけの海、「公海」と呼ばれ、どの国も原則、自由に利用できる海域で、日本の漁船もサンマを取っています。

問題は取ったあとです。多くの船が水揚げする北海道・根室の港に最短距離で向かうには、北方四島の南、ロシアが主張する排他的経済水域を通る必要があります。このとき、ロシアの当局から「臨検」と呼ばれる、船の検査を要求される可能性があります。

Q どうしてですか?サンマを取るのは問題ないということですよね。
A 公海で取るのはもちろん、ロシアが主張する排他的経済水域を通るのも条約で認められ、何も問題がありません。ただ、排他的経済水域の沿岸の国が臨検を行う権利もまた、認められています。
漁業者は、日ロ関係の悪化でロシア当局が厳しくなり、「このサンマは不正に取ったのではないか」と指摘されて、「万が一にでも拿捕されるようなことがあれば一大事だ」と気をもんでいるわけです。

Q となると、この海域を避けるしかないのでしょうか。
A あくまで漁業者の判断次第ですが、漁業団体によりますと、今のところロシア側は「通行は問題ない」と伝えてきていて、25日の夕方時点ではどの船もまっすぐ戻ってきているということです。

C220826_5.jpg

ただ今後、仮に臨検が頻発するようなことがあれば、う回する船が出てくるかもしれません。遠回りで時間が余計にかかり、サンマの鮮度にも影響しかねません。それに原油価格高騰のさなか、燃料代も多くかかってしまいます。

これまで日ロ関係が悪化している中でも、ロシアとの協定に基づいてサケ・マス漁やコンブ漁は続けられました。サンマ漁も安全に行われて、おいしいサンマが届いてほしいと思います。

(佐藤 庸介 解説委員)


この委員の記事一覧はこちら

佐藤 庸介  解説委員

こちらもオススメ!