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米ASEAN首脳会議へ

髙橋 祐介  解説委員

アメリカのバイデン大統領は、12日からASEAN=東南アジア諸国連合との特別首脳会合を首都ワシントンで開きます。髙橋解説委員とお伝えします。

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Q1)
けさのイラストは、蝶ネクタイにエプロン姿のバイデン大統領、いったい何をしている?
A1)
賓客を招いておもてなしの準備に忙しいバイデン大統領。ASEANと対話を始めて45年になるのを記念して、初日はホワイトハウスで夕食会、2日目は国務省で首脳会合を開き、さらなる関係強化をめざします。ただ、ASEAN加盟10か国のうち、軍事クーデターでアメリカが制裁を科しているミャンマーは招待されていません。来月末で退任するフィリピンのドゥテルテ大統領も欠席する見込みです。

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Q2)
何を話しあう?
A2)
そこがポイント。アメリカ側は、ウクライナ危機や南シナ海問題、ミャンマーの人権問題、コロナ対策や気候変動など、幅広い分野で意見を交換したいとしています。
そうした議論に最も神経を尖らせているのは、実はこの場にいない中ロ両首脳かも知れません。アメリカがインド太平洋地域に関与を強める背景には、とりわけ中国に対抗するねらいもうかがえます。
しかし、ASEAN加盟国の多くは、中国と経済的つながりが深く、ロシアから武器を購入している国々もあり、大国どうしの対立には巻き込まれたくないようです。現に、ロシアへの制裁に同調したのはシンガポールだけ。ことしのASEAN議長国のカンボジアやG20議長国のインドネシア、それにAPEC議長国のタイなども、国際会議からロシアを排除することには反対しています。

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Q3)
首脳会議の成果はあまり期待できない?
A3)
確かにその辺は不透明ですが、こちらの未完成の料理には注目が集まりそうです。バイデン大統領が、今月下旬の初来日を機に立ち上げをめざしている「IPEF(アイペフ)=インド太平洋経済枠組み」。アメリカ主導で貿易やサプライチェーン、インフラ整備や脱炭素などで協力する新たな経済連携です。
「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、どこまで東南アジア各国から協力を引き出せるか?バイデン大統領の手腕が試されます。

(髙橋 祐介 解説委員)


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