◆地球温暖化を食い止めるための初めての国際条約が作られてから今月で30年
温暖化対策のルールとしては「パリ協定」などが知られていますが、このパリ協定もその前にあった京都議定書も、いずれも国連の「気候変動枠組条約」のもとで大気中の温室効果ガスが増え過ぎないようにするために作られた具体的ルールにあたります。つまり、温暖化対策の原点とも言えるのがこの条約で1992年5月に採択されました。
当時、冷戦終結後の新たな地球規模の脅威として温暖化がクローズアップされ、世界が共に対策に取り組むことを合意。東西各国、ウクライナやロシアも当初からこの条約に参加しています。
◆「脱炭素社会」に向かう道がかすんでしまっている?
天然ガスなどの一大産出国であるロシアのウクライナ侵攻で世界のエネルギー事情は大きく不透明さを増し、今は多くの国が「まず当面のエネルギーを」と化石燃料の確保に奔走する姿勢も見られます。ヨーロッパでも廃止予定だった石炭火力発電所を延長する動きがあり、アメリカではシェールオイルの増産にも動いています。
これから30年後の2050年代には脱炭素社会を実現する必要があるにも関わらず、 天然ガス以上に二酸化炭素の排出が多い石炭や石油で穴埋めをすれば、気温の上昇を1.5℃までに抑えるという目標への道筋からも外れてしまいかねません。
◆今後なにが求められる?
長年この条約の科学的根拠となってきた国連の機関IPCCは先月発表した報告書で、 食糧危機や災害の激甚化など深刻な被害を避けるためにも温室効果ガス削減には一刻の猶予もないと示しています。化石燃料の価格が高騰する今だからこそ、むしろ再生可能エネルギーへの集中的な投資など脱炭素化へとエネルギー転換を加速するチャンスだとも言えます。
冷戦後の国際秩序も温暖化対策も歴史を後戻りさせないことが今求められています。
(土屋 敏之 解説委員)
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