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ウクライナ危機でロシアがロケット打ち上げ中止 宇宙ビジネスがピンチ

水野 倫之  解説委員

ウクライナへ侵攻したロシアが経済制裁に反発してロケットの打ち上げサービスを中止し、世界の宇宙ビジネスに影響が拡大。
こうした中、日本の三菱重工に問い合わせが相次いでいる。水野倫之解説委員の解説。

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ロシアが発射台からロケットソユーズロケットを撤去しているイラストを描いてみた。
ロシアは去年、各国の衛星などをソユーズロケットなどで20回以上打ち上げた宇宙大国。
それが衛星打ち上げを一方的に中止した。
影響で、イギリスの通信会社の衛星や、ヨーロッパ版GPS衛星などの打ち上げが相次いでキャンセルされた。

影響は日本のベンチャーにも及ぶ。
観測衛星の画像を世界に販売するベンチャーでは、今年後半4機の衛星をソユーズで打ち上げ、ビジネスを拡大する計画。
しかし今後キャンセルとなるおそれもあり、「アメリカなど世界中のロケットを探している」と危機感をあらわに。
こうした中、世界の衛星事業者から日本の三菱重工にも問い合わせが相次ぐ。

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「 三菱のH2Aで打ち上げてほしい」というわけ。
H2Aは打ち上げ価格が高く、民間衛星などの商業打ち上げはこれまで5回にとどまっていたが、この際高くてもかまわないというわけ。
三菱にとってはビジネスチャンス!
となるとよかったが、残念ながらすぐにはチャンスをものにできない事情。

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三菱は新型のH3ロケットをJAXAと共同開発中で、H2Aはあと5回で引退が決まっている。もう部品も作っておらず、新規の受注は困難。
じゃH3で、という依頼も多いということだが、こちらも新型エンジンの開発に手間取り、初号機の打ち上げのメドがまだたっていない。
ロシアのロケットが使えない状況は長期化しそう。
H3の開発と量産体制の確立を急いで行い、日本も世界の宇宙ビジネスの期待に応えられるようにしてほしい。

(水野 倫之 解説委員)


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