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ウクライナ侵攻の日本への影響を世論調査から解説

曽我 英弘  解説委員

ロシアによるウクライナ侵攻後初めてとなる3月のNHK世論調査で、ロシアへの経済制裁の実施に肯定的な回答が8割余りに上った。今回の危機が日本経済や原発再開論議にどう影響するのか読み解く。

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3月のNHK世論調査は、欧米諸国と協調して進めてきたこれまでの政府の対応を6割近くが評価する結果となった。中でもウクライナ侵攻を受けたロシアに対する経済制裁を「妥当だ」と評価するにとどまらず、「さらに強化すべき」と考える人もほぼ同じ割合の40%に上り、今回の侵攻への強い憤りを示す結果となった。またウクライナの避難民を日本に受け入れる政府の方針も85%が支持しており、今後スムーズに進めていくことが人道上重要だ。
ただ侵攻の終わりが不透明な中、懸念されるのが経済だ。軍事進攻が日本経済にもたらす影響を「懸念している」人が82%に達し、「していない」の11%を大きく上回った。経済制裁はそれを行う側にも相応の痛みが伴うほか、今後原油や天然ガスなどの価格がさらに高騰する可能性も指摘されている。
こうした状況を受けて自民党や野党内には、電力の安定供給のためとして運転停止中の原子力発電所の再稼働を求める声が出ている。今回、原発の運転再開を「どちらともいえない」と答えた人は44%と半数近くに上り、同じ質問をした4年半前より増えた分、「反対」は減った。ただ日本国内の原発も万が一、軍事攻撃されれば極めて危険で、安全保障上のリスクになるという声も少なくなく、今回のウクライナ危機が原発の是非にどう影響するのか、現時点で予断を持つことはできない。
世界の情勢が極めて不安定な中、これを機に国会でも国の安全保障や、私たちのくらしをめぐる議論を一層深めてもらいたい。

(曽我 英弘 解説委員)


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