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2022春闘スタート 賃金の底上げなるか?

牛田 正史  解説委員

1月25日に経団連と連合の幹部が参加する「労使フォーラム」が開かれ、ことしの春闘が事実上スタートしました。
去年、新型コロナの影響で伸び悩んだ賃金。ことしの春闘で底上げは図れるのか。
交渉の焦点についてお伝えします。

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去年は新型コロナの影響で、民間の主要企業(従業員1000人以上・資本金10億円以上)の賃上げ率が、厚生労働省のまとめで1.86%と、8年ぶりに2%を下回りました。
今回、労働組合の連合は、ベースアップ相当分と定期昇給をあわせて、4%程度の賃上げを要求していて、去年を大きく上回る賃上げを勝ち取りたいという考えで交渉にのぞみます。

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一方、経営者側はどのような考えなのか。
去年、岸田総理大臣が業績の回復した企業は3%を超える賃上げを実現するよう、経済界に協力を求めました。
こうした中で経団連も、1月に発表した春闘方針の中で、収益が拡大している企業については、「ベースアップを含めた賃金の引き上げが望まれる」として、去年より前向きな姿勢を打ち出しています。

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これをみると、ことしはかなり賃上げが進むのでは?と期待できそうにも見えますが、実際の交渉は、簡単に進むとは思えません。
経団連が「賃上げが望まれる」とするのは、収益が拡大している企業などであって、すべての会社ではありません。
また、ここに来てオミクロン株が急拡大し、新型コロナが収束する目途も立っていません。特にサービス業を中心とした業績が回復していない企業や、中小企業などは、依然として交渉が難航することが予想されます。
大企業ですら、賃上げに慎重な会社がまだまだ多い中で、新型コロナの影響を大きく受けている中小企業では、なおさら厳しくなります。

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そして、非正規労働者の賃上げも不透明です。
労働組合の加入者が少なく、これまでの春闘を見ましても、決して、十分な議論や成果が上がってきたとは言い切れない状況です。

今、日本では、今後の経済成長のためにも、賃上げが必要だという気運が高まっています。しかし、賃上げが一部の大企業や正社員に留まれば、底上げにはつながりません。
労働者の7割が働く中小企業、
そして全体の4割近くに達する非正規労働者の賃上げが重要になります。
中小企業で言えば、取引先である大企業が、取引価格の適正化を図るなどして、賃上げを後押しする。
そして非正規労働者で言えば、春闘の主要な項目として議論することが必要です。
ことしの春闘はまさに、賃上げの動きをどこまで広げられるかが問われるものとなります。

(牛田 正史 解説委員)


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