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米軍協力者アフガニスタンから退避へ

髙橋 祐介  解説委員

アメリカ軍のアフガニスタン撤退に伴って、これまで駐留米軍に協力してきたアフガニスタン人とその家族らが、国外への退避を進めています。髙橋解説委員とお伝えします。

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Q1)
けさのイラストは、バイデン大統領が鳥になってアフガニスタンを飛び立った?
A1)
アメリカの中枢を襲った同時多発テロ事件から間もなく20年になります。「アメリカ史上最も長い戦争を終わらせる」そう公約したバイデン大統領は、当初の予定を早めて今月末までにアメリカ軍の撤退を完了させる方針です。
ところが、現地で通訳や基地の運営で協力してきた人たちは、反政府武装勢力タリバンによる報復で、身に危険が及ぶことを心配しています。このためバイデン政権は、希望者にはアメリカに移住できる特別なビザを発給する計画です。その第1陣およそ2500人のうち、すでに200人が南部バージニア州の基地に到着しています。

Q2)
どれぐらいの人がアメリカ移住を希望している?
A2)
ビザの申請者だけで2万人を超え、家族らも含めると数万人規模になるという見方もあります。ただ、審査に時間がかかるため、バイデン政権は、中東のカタールやクウェートなど、第3国に施設を設け、一時的な退避先とすることも検討しています。

Q3)
なぜ、そんなに多くの人たちが国外退避を望んでいる?
A3)
治安の悪化が避けられそうもないからです。現に、アメリカ軍が撤退を本格化して以降、タリバンは攻勢を強めて支配地域を広げ、各地から助けを求める声が後を絶ちません。
しかしバイデン政権は「撤退後も治安維持で協力は惜しまない」としながらも、「アフガニスタンの将来はアフガニスタン国民の手に委ねられている」という立場を崩しません。
このため、いま必要なのは、アフガニスタン政府とタリバンによる和平プロセス進展を後押しすることでしょう。このまま戦闘が続けば、米軍協力者にとどまらず、さらに多くの難民が行き場を失う恐れもあるからです。
アメリカ軍の撤退完了まで残り1か月足らず、アフガニスタン情勢は重大な岐路に差し掛かろうとしています。

(髙橋 祐介 解説委員)


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