イギリス政府は、首都ロンドンのあるイングランドで、19日から屋内でのマスクの着用義務など、新型コロナウイルスの規制をほぼ全て撤廃します。ワクチン接種が進む中、国民がウイルスとどう向き合うのか、新たな段階に入ろうとしています。虫明英樹解説委員です。
Q 虫明さん、こちらのイラスト、これから規制を撤廃しようというのに、ウイルスが沢山、押し寄せていますね。
A はい。実は、いまイギリスでは変異ウイルスの「デルタ株」が広がり、一日あたり5万人を超えるような感染者が出たりしています。こうした中、▼公共交通機関などでのマスクの着用義務や、▼イベントや集会での人数制限なども含め、人との距離をあけるソーシャルディスタンス、そして▼在宅勤務の実施など、首都ロンドンがあるイングランドで、ほぼ全ての規制を撤廃します。ちょっと驚くような状況での規制撤廃です。
Q 5万人以上! 大丈夫なんですか?
A はい。ジョンソン首相は、今回の決断の根拠として、ワクチン接種がもたらした新たな状況をあげています。
こちら、感染者数のグラフですが、ことしの初めあたりは、感染者の増加とともに死者も増えていたんですが、最近は、感染が急拡大しても、死者はほとんど抑えられています。イギリスのワクチン接種率は、大人を対象にみた場合、1回目が9割近く、2回目も7割近くにのぼり、感染者の増加と死者の増加が切り離されていくような新たな状況がおきているんです。
Q 確かに感染しても、重症化したり、死亡したりするリスクが大きく減るとなると、新型コロナウイルスそのもののイメージも変わってきますね。
A はい。大きな被害をもたらしている新型コロナですが、ワクチンなどで免疫を獲得出来れば、どうウイルスを恐れるべきか、つきあいかたも変わります。
ただ本当に、ここまで規制を撤廃してよいのか、専門家からは、時期尚早との強い批判も出ていて、ロンドン市長が、市の運営する地下鉄などでは、マスクの着用を求めるといった動きも出てきました。
日本も、今後、ワクチン接種によって多くの人が免疫を獲得する段階が来るわけですが、今回のイギリスの取り組みが成功し、パンデミック以前の生活に近づいていけるのかどうか、日本の今後を考える上でも貴重な知見を与えてくれることは間違いなく、世界各国もその行方に注目しています。
(虫明 英樹 解説委員)
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