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"奄美・沖縄""縄文遺跡群"世界遺産へ

土屋 敏之  解説委員

◆16日からユネスコの世界遺産委員会が始まった

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行列に並んでいるのは各国が推薦した世界遺産の候補で、順番に審議を受けることになります。日本からは、自然遺産に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が、文化遺産に「北海道・北東北の縄文遺跡群」が推薦されています。
世界遺産委員会は世界各地域の21か国が委員を務め、新たな世界遺産として登録するものを決めたり保全状況などを話し合う場で、これまで毎年開かれてきましたが、今回は新型コロナウイルスの影響で去年中国で開催予定だった会合が1年延期され、オンラインでの開催になりました。
また、去年開催されず2年分まとめて審議するため、推薦は合わせて40件以上にのぼり、会期も例年より長い16日間に及びます。今のところ「奄美・沖縄」の審議は来週月曜あたり、「縄文遺跡群」は火曜日あたりの予定とされており、世界遺産に登録されれば、奄美・沖縄は日本で5件目の自然遺産に、北海道・北東北の縄文遺跡群は20件目の文化遺産になります。

◆見通しと今後の課題は?

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現地調査などを行った諮問機関のIUCNとICOMOSが、どちらも「世界遺産にふさわしい」と最高レベルの評価をしているため、登録されるのはまず確実と見られています。とは言え、世界遺産になったら「めでたしめでたし」ではありません。例えば、西表島では観光客の人数制限を行うことや、縄文遺跡群では現在民間所有の土地の公有化を進めることなど、諮問機関は今後の保全策も日本に求めています。
そもそも、世界遺産は観光資源にお墨付きを与える制度ではなく、人類の財産として次世代に守り伝えていく責任を各国が負うものですから、観光客の急増で貴重な自然や文化財が損なわれるようでは本末転倒ですし、国も自治体も観光に訪れる私たちも、その価値をあらためて考えるきっかけになればと思います。

(土屋 敏之 解説委員)


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土屋 敏之  解説委員

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