吉川貴盛元農林水産大臣が、在任中に現金500万円の賄賂を受け取ったとされる事件。
現金を渡した贈賄の罪に問われている大手鶏卵生産会社の元代表の初公判が東京地方裁判所で開かれます。
その注目点を解説します。
Q:2人が雲の中にいますね。
A:はい。吉川元大臣は鶏卵生産会社の秋田善祺元代表から現金を受け取っていましたが、詳しいことはわからない、雲の中、という状況です。
本人が公の場で何も説明していないんですね。
ただ、捜査でわかった範囲では、背景には、鶏のために止まり木を設置するといったコストのかかる国際的な飼育基準をめぐって、鶏卵業者の団体が政府に対して導入に反対するよう求めていたことなどがあるとみられます。
そこで農林水産省の第三者委員会は対応を検証して報告書をまとめ、今月、公表しました。
それによると元代表には「手厚い対応」が取られ、不透明さが認められました。
一方で、元代表からの「働きかけ」で政策がゆがめられた事実は認められなかったと結論づけました。
Q:大きな問題はなかったということでしょうか?
A:あくまで政策に関しては、です。
そもそも大臣は、政策をゆがめたかどうかに関わらず、職務に関連して現金を受けとること自体が罪になりますが、第三者委員会は、「裁判への影響を考慮した」として2人には聴取していません。
現金の趣旨という核心部分は明らかになっていないんです。
Q:そうなると、裁判での発言が注目ですね。
A:はい。検察の調べに対して元代表は「違法性があると分かっていた」と認めていますが、吉川元大臣は「就任祝いだと思った」などと賄賂の認識を否定しています。
今回は、政治とカネをめぐる問題が相次ぐ中で、現職の大臣がどのような経緯で、なぜ現金を受け取ったのか、という点が核心です。
吉川元大臣の裁判の日程は決まっていませんが、まずは、元代表が法廷で何を述べるのかに注目したいと思います。
(山形 晶 解説委員)
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