訪問販売やマルチ商法などの契約書について、消費者の「承諾」があれば、メールで送ることを認める特定商取引法の改正案が、今週、国会で成立しました。今井解説委員とお伝えします。
Q)これは、どういう絵ですか?
A)例えば、シロアリ駆除の訪問販売。契約した後の契約書は、これまで、紙で渡すよう義務付けられていました。そこに、新たに、メールで送ることができるバイパスを、消費者庁がつくったという絵です。
Q)これに、なにか問題があるのですか?
A)紙の契約書の場合、クーリング・オフ、つまり、一定の期間、無条件で契約を解除できることを赤く、大きな字で書くことが義務付けられていますので、本人や家族がそれを見て、クーリング・オフすることができます。それが、メールになると、(スクロールしてみますので)本人も家族も気付かず、被害が増える心配があると、反対の声が相次ぎました。でも、デジタル化の流れの中、結局、この部分の施行までの期間を、1年から2年に延ばした上で、成立しました。
Q)施行までの期間を2年に延ばしたことで、どのようなことをしようとしているのでしょうか?
A)消費者庁は、施行までに、被害を増やさない「承諾」の取り方を検討するとしています。時間をかけて、丁寧に議論できるようになったという意味はあります。ただ、大事なのは中身です。
Q)どんな対策が考えられるのですか?
A)消費者庁は、ここへきて、例えば、
▼ 原則「契約書をメールで送るための承諾書」は紙で渡す。そして、高齢者については、家族に伝えることも一案だとしています。だったら、そもそも契約書自体を紙で渡す方がいいと、多くの事業者に思ってもらう。できるだけ「メールの道」を通りにくくすることで消費者団体の理解を得ようという、奇策のようにも見えます。
▼ 一方、消費者団体などからは、そもそも、不意打ちの訪問販売などへの規制を強化するといった抜本的な対策を検討すべきとの意見もでています。
消費者庁が、被害を減らす効果のある対策にどこまで踏み込めるのか。これからの2年に注目したいと思います。
(今井 純子 解説委員)
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