そばの原料がことし値上がりしています。
その背景に大国の思惑があるということですが、どういうことなのでしょうか。
安間解説委員です。
A1)
そばは古くから日本人に親しまれてきましたが、今、原料となるそばの実は、大国である中国、アメリカ、ロシアからの輸入が多いのです。
日本の自給率はこのところ増えていますが、輸入はそれでも7割前後。
このうちもっとも多い中国産のものは、ことし、前の年と比べて3割ほど値上がりしているといいます。
原料ですのでまだ外食・小売などへの影響は限られていますが、チェーン店のなかには一部で値上げの動きも出始めています。
Q2)思惑というのはどんなことですか。
A2)
まず中国の事情ですが、少し前にさかのぼります。
中国とアメリカの間では、前のトランプ政権時代、貿易摩擦が激しくなりました。
この影響で中国政府は、アメリカへの依存度を低くしようと、大豆などの国産化を進めるため、補助金を出して転作を推進しました。
このため、そばから大豆などに乗り換える農家が増えて供給が少なくなり、そばの実の価格が上昇しました。
さらにこれに追い打ちをかけようとしているのが、ロシアの動向です。
Q3)ロシアとそば、あまりなじみがないのですが。
A3)
実はロシアはそばの生産と消費が世界最大で、中国や日本にも輸出しています。
麺ではなくおもにそばの実として、ロシア風のおかゆなどにしてよく食べます。
お米に例えると玄米のように、ちょっとくせの強いかおりがありますが、慣れるとやみつきになりました。
ロシアでもことし国際価格の上昇に伴って国内での価格が上がり、政府が消費者保護のため、8月末までそばの実の輸出を禁止することを決めたのです。
日本や国際市場への供給が減る見通しで、影響が懸念されています。
そばは、かおりやのどごしを純粋に楽しみたいところですが、輸入そばの裏側に、こうして国際政治や経済の思惑が作用していると思うと、味わいも違ってくると思うのですが、いかがでしょうか。
(追記)国産のそばは・・・
業界団体の日本蕎麦協会によりますと、中国産は供給が減少し、値上がりしているのに対し、国産の生産量はこのところ年々増えて価格が下がり、中国産と国産の価格差は縮まっているということです。
蕎麦協会では、コロナ禍の巣ごもりでそばの需要も増えているなかで、これを機会に、国産のそばの、かつてと比べた割安感や国産そばならでは魅力をアピールして、輸入そばのシェアに食い込んでいきたいということでした。
(安間 英夫 解説委員)
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