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"ひとつの中国"は同床異夢

髙橋 祐介  解説委員

来週16日に予定されている日米首脳会談は、台湾問題をめぐり、日米がどこまで連携できるかが注目を集めています。髙橋解説委員とお伝えします。

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Q1)
イラストは、寝室で日米中3か国の首脳が川の字になっている?
A1)
けさのタイトルは同床異夢。日本もアメリカも、中国と国交を正常化して以来、台湾との外交関係を断絶し、「ひとつの中国」といういわば同じ布団にくるまってきました。でも、それぞれ見ている夢は異なります。
中国が唱える「ひとつの中国原則」は「台湾は中国の不可分の一部」と言い切ります。一方、バイデン政権が踏襲した「ひとつの中国政策」は、外交文書では、そうした中国側の主張をアメリカは「acknowledge=知り置く」と規定します。中国の立場に異は唱えないものの、「recognize=承認する」「agree=同意する」といった表現ほど法律的に強い言葉ではありません。アメリカは、中国の主張を認めるか?それとも台湾を必ず防衛するか?敢えて明確にしない曖昧戦略をとってきたのです。

Q2)
どうしてアメリカはそうした曖昧戦略をとってきたのでしょうか?
A2)
もしアメリカが、台湾は中国の一部だと認めれば、中国は台湾を武力で統一するかも知れない。逆に、台湾防衛の意図を明確にすれば、台湾は独立をめざして紛争が拡大しかねないと考えたからです。ところが、米中の国交正常化から40年以上経った今、布団には、綻びが目立つようになりました。アメリカ側の専門家は「中国の軍事力の強大化によって、もはや曖昧戦略では紛争を抑止できない」「中国は6年以内に台湾に侵攻する可能性もある」と警鐘を鳴らしています。

Q3)
では、日本は、台湾問題にどのように対応してきたのでしょうか?
A3)
日本は、台湾は中国の一部だとする主張を「十分理解し、尊重する」という立場です。日本は、中国との経済的なつながりが深い上、台湾との距離も近く、万が一にも台湾有事が起きた際に受ける影響はアメリカより格段に大きいと考えられてきたのです。日米の連携で台湾の平和と安定は維持できるのか?台湾問題は、来週の日米首脳会談で焦点のひとつになりそうです。

(髙橋 祐介 解説委員)


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