きょうから雇用をめぐるルールが大きく変わります。
その一つが、大企業に対する中途採用比率の公表義務化です。
Q①大企業が、中途採用比率を公表することを義務にする。
これは、なぜなんでしょう?
A
これは、きょう同時に始まる、
他の二つの雇用ルールと大きな関係があるんです。
その一つは「70歳就業法」。
企業は現在、社員を65歳まで雇用することが義務ですが、
さらに70歳まで働けるように企業は努力をしてくださいと。
もう一つは、同一労働・同一賃金。
正規・非正規の間で、不合理な格差があってはダメですと。
意欲を持って働けるようにしてくだいと。
コチラはきょうから中小企業も含めて全面適用になった。
この二つには、その狙いに共通する所があって、
人口減少で働く人が減っていく中で
元気で意欲のある人には、できるだけ長く働いてもらって、
社会を支えてもらおうと言うのが国の狙いなんです。
Q②でも、それだけ長く働くとなると
会社とか仕事の内容も変わったりするんでしょうか?
A
そうなんです。
最初から70歳まで働くことを前提で考えると、
多くの人にとって転職や中途採用は、当たり前になってくる。
また就職氷河期世代の人たちの再チャレンジにとっても
転職や中途採用は必要なことです。
ところが大企業になればなるほど、中途採用は減るんです。
たとえば、厚生労働省の雇用動向調査によると、
2019年の中途採用比率は、
従業員が5~299人の企業では75、8%なのに対し、
1000人以上の企業では56、3%にとどまっています。
そこで、大企業に対し、中途採用比率の公表を個別に義務づけて、
もっと取り組みを促すことになった。
Q③具体的にどういうことが義務になったんですか?
A
対象となるのは、従業員301人以上の大企業でして、
正社員のうち中途で採用した人がどれくらいいるのかを
年に一回以上、
過去3年分のデータを
ホームページなどで公表しないといけない。
Q④中途採用の比率は高いほど、いいということになるんですか?
A
実は、そうとはいいきれないんです。
というのも、たとえば、ブラックな企業があって
社員がすぐにやめてしまうので中途採用を増やした。
こういう場合も中途採用比率が高くなって、
この数値だけを見ていると、誤解してしまうかもしれない。
なので、より総合的にその企業を判断してもらえるよう
たとえば、採用後の定着率とか
人材育成の計画とか、そういう情報も合わせて、
今後、企業が自主的に公表するよう政府は呼びかけているんです。
重要なのは長く働くことのできる環境を
どう作っていくのか、ということだと思います。
(竹田 忠 解説委員)
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