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イスラエル総選挙 ネタニヤフ首相 続投か交代か

出川 展恒  解説委員

中東のイスラエルでは、23日、この2年で4回目となる異例の総選挙が行われます。対外強硬派のネタニヤフ首相が、政権を維持できるかどうかが最大の焦点です。
出川展恒解説委員に聞きます。

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Q1:
イスラエルの総選挙、2年間で4度目とは、あまりに多いですね。

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A1:
はい。イスラエルの議会は、1院制で定数120ですが、多くの政党が乱立し、与野党の勢力がきっ抗しています。与党内、野党内でも、仲たがいが起き、混沌とした政治状況です。選挙後の連立協議が不調に終わったり、連立政権を維持できなくなったりして、その都度、やり直しの選挙が行われているのです。
今回は、同盟国アメリカが、トランプ政権からバイデン政権に代わるなど、国際環境が大きく変化する中での選挙となりました。

Q2:
ネタニヤフ首相、崖っぷちに追い込まれていますが、政権を維持できるかが焦点なのですね。

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A2:
はい。イランやパレスチナに対し、ひたすら強硬姿勢のネタニヤフ氏は、1990年代からの通算で、15年近く首相の座にあり、これまで何度も政権の危機を乗り越えてきました。ところが、今回は、文字通り、政治生命をかけた選挙です。収賄や背任など複数の汚職の罪で裁判中の身であり、新型コロナウイルスの感染拡大で、経済が落ち込み、大勢の失業者が出た政治責任を追及され、国民から辞任を求める声が高まっているのです。

Q3:
ネタニヤフ首相、続投の可能性はどうなのでしょうか。

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A3:
ネタニヤフ氏にとって、強力な武器は、世界最速のペースで進むワクチン接種です。自らアメリカのファイザー社のトップと交渉してワクチンを確保し、すでに国民の半数が、2回目のワクチン接種を終え、経済活動を再開させています。ネタニヤフ氏は、その成果を最大限アピールして投票日を迎えました。
直前の世論調査では、ネタニヤフ氏が率いる与党「リクード」が、30議席前後を獲得し、第1党となる見込みですが、複数の政党との連立で、議会の過半数を確保できるかは、微妙な情勢です。他方、反ネタニヤフの勢力も、過半数の確保は難しいと見られ、最終的にどう決着するか、予断を許しません。
誰が首相になるかは、イランとの軍事的緊張や、パレスチナとの和平の行方など、中東情勢に大きな影響を与えるだけに、この選挙から目が離せません。

(出川 展恒 解説委員)


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