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メルケル首相の後継者は?

二村 伸  解説委員

メルケル首相の後継者争いとして注目されたドイツの与党、キリスト教民主同盟の党首選挙が16日行われ、新しい党首にアルミン・ラシェット氏が選出されました。

Q.新しい党首に選ばれたラシェット氏とはどんな人物ですか?

日本人が多く住むデュッセルドルフやケルンなどを抱えるドイツで最も人口が多いノルトライン・ヴェストファーレン州の首相で、与党の副党首としてもメルケル首相を支えたジャーナリスト出身のベテラン政治家です。派手さはありませんが調整能力に長けた人物と言われます。ドイツでは2018年にメルケル首相が地方選敗北の責任をとって今年9月の任期満了をもって政界を退くと表明して以来後継者争いが続いていました。メルケル路線の継承をめざすラシェット氏が右派のメルツ氏に勝利したのは、コロナ禍で変化より安定を多くの党員が望んだためと見られます。

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Q.まだハードルが残っていますね。

はい。次は首相候補争いです。最大与党の党首とはいえ首相のポストが約束されたわけではありません。というのは、キリスト教民主同盟は、南部バイエルン州の地方政党キリスト教社会同盟と会派を組み、選挙で統一の首相候補を立てますが、今回はキリスト教社会同盟のマルクス・ゼーダー党首がバイエルン州首相としてのコロナ対策を評価され高い支持を得ています。後継者争いにも新型コロナが影響しているのです。

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そして最後のハードルが9月の総選挙です。現時点では両党からなるキリスト教民主社会同盟が2位以下を大きく引き離していますが、選挙までまだ8か月あり予断を許しません。

Q.メルケル氏のような強いリーダーシップのある首相は誕生するのでしょうか?
どの候補も対外的には知名度に欠けますが、ドイツは首相に議会解散権がなく原則4年の任期を全うします。それが政策がぶれず指導力を身につけることにつながるのではないでしょうか。実はメルケル首相が党首に就任したとき現地で取材していたのですが、党内の基盤も弱く今日のような強い指導者になると予想した人はほとんどいませんでした。国民の政治への関心の高さと熾烈な競争が強い指導者を生み出す要因なのかもしれません。

(二村 伸 解説委員)


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二村 伸  解説委員

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