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米・イスラエルの外交攻勢 次はどの国?

出川 展恒  解説委員

長年対立してきたイスラエルと、UAE・アラブ首長国連邦、および、バーレーンが、先週15日、国交正常化に関する合意に調印しました。今後、イスラエルとアラブ諸国の関係はどうなるでしょうか。出川解説委員です。

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Q1:
仲介したトランプ大統領、成果を強調していますが、イスラエルとアラブ諸国の国交正常化に熱心なのはどうしてですか。

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A1:
トランプ大統領、苦戦も伝えられる大統領選挙を前に、外交成果をアピールする狙いがあると見られます。イスラエルがアラブの国と国交を結んだのは26年ぶりです。自らの支持層で、イスラエルを重視する「キリスト教福音派」からの支持が一層強固になると考えたのでしょう。敵対するイランに対する包囲網を広げる狙いもあります。パレスチナ問題の解決を後回しにして、イスラエルとアラブ諸国との国交正常化を先に進める歴代政権とは異なるアプローチが功を奏したと主張しています。

Q2:
今後、国交正常化の動きは、どうなるでしょうか。

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A2:
トランプ大統領は、いくつかのアラブ諸国が続くだろうと述べていますが、次は、ペルシャ湾岸のオマーンではないかという見方が有力です。今回の国交正常化を支持する声明を出しているうえ、イスラエルのネタニヤフ首相が、すでに2年前にオマーンを訪問し、当時の国王と会談しているからです。
最も注目される国は、アラブ諸国、そして、イスラム世界の盟主であるサウジアラビアですが、今のところ、慎重な姿勢です。

Q3:
それは、どうしてですか。

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A3:
サウジアラビアの前の国王が、アラブ諸国の統一した和平案として、「イスラエルがすべての占領地から撤退し、パレスチナ人の独立国家を承認することが国交正常化の条件だ」と提唱したことが背景にあります。今のサルマン国王も、この原則を重視する立場です。宗教界からの反発も予想され、イスラエルとの国交正常化は簡単ではありません。
ただし、国王の息子のムハンマド皇太子は、トランプ政権との関係を深め、イラン敵視政策を進めてきただけに、今後、国王が替われば、状況が変わるのではないかという見方もあります。
イスラエルとアラブ諸国の関係正常化がどこまで進むのか、中東政治の流れを変える動きで、当分、目が離せません。

(出川 展恒 解説委員)


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