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「自民、『ミサイル阻止力』保有を提言」(ここに注目!)

梶原 崇幹  解説委員

ミサイル防衛体制をめぐり、自民党は、8月4日、相手の領域内でも弾道ミサイルなどを阻止する能力、「ミサイル阻止力」の保有を検討するよう求める提言をまとめ、安倍総理大臣に提出しました。

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Q)「ミサイル阻止力」は、聞きなれない言葉ですね。

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A)これは、弾道ミサイルの発射基地などを、直接、攻撃できる能力のことです。これまで、「敵基地攻撃能力」と呼ばれてきましたが、国際法で禁じられている、「先制攻撃」と受け取られかねないことから、自民党は、今回、表現を見直しました。政府は、こうした能力の保有は、憲法上、許されるとしてきましたが、実際には、攻撃面はアメリカ軍にゆだね、自衛隊は、防衛に専念し、政策的に保有してきませんでした。

Q)この提言は、なぜ、このタイミングでまとめられたんでしょうか。

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A)ことし6月、政府が、新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の山口・秋田両県への配備を断念したことがきっかけです。これを受けて、政府は、現在、NSC=国家安全保障会議で、ミサイル防衛体制のあり方を検討しています。提言は、この検討作業に反映させようとまとめられたもので、この中では、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威が増していて、迎撃だけでは防御しきれない恐れがあると指摘しています。
ただ、自民党内では、専守防衛を逸脱するのではないかとの指摘があったことから、「防衛力整備は、自衛のために必要最小限度のものに限る」という記述も盛り込まれました。

Q)政府内での議論、見通しはどうでしょうか。

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A)政府は、来月(9月)末をめどに一定の方向性を出す方針です。
安倍総理大臣は、4日、「提言を受け止めて、しっかりと新しい方向性を打ち出し、速やかに実行していく」と述べました。
ただ、行方には大きな波が待ち受けています。
▼まずは、どのような装備が必要になるかです。装備の導入には、相当の時間と費用がかかるという見方があるうえ、かえって地域の緊張を高めてしまうとの指摘があります。
▼さらに、与党内の調整があります。公明党は、もともとこの議論に慎重で、調整は難航も予想されます。
▼そして、なにより、国民の理解が得られるかどうかです。賛否の分かれる課題で意見をまとめるには、政治的な力を集中させる必要がありますが、新型コロナウイルスへの対応は待ったなしです。
このように行方は波高しですが、防衛政策の転換につながる議論だけに、透明性のある十分な議論を求めたいと思います。

(梶原 崇幹 解説委員)

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