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「対韓国輸出優遇措置見直し WTOへ」(ここに注目!)

神子田 章博  解説委員

日本の韓国に対する輸出管理をめぐって、韓国側が国際ルール違反だと主張している問題が、WTO=世界貿易機関を舞台に争われる見通しとなりました。

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Q この問題、どういう問題なんでしょうか?

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A 日本政府は去年7月、日本から韓国に輸出していた軍事転用が可能な化学製品について、韓国政府が厳格な管理を行っていないなどとして、安全保障上の友好国などに認めている輸出が簡単になる優遇の対象から除外しました。この措置に対し、韓国側は、その後法改正を行って貿易管理の体制強化をはかっているなどとして、措置の撤回を求めてWTOに提訴したのです。

Q それに対し日本はどう主張しているのですか?

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A 日本の措置はあくまで安全保障上の懸念を理由としたもので、ルール違反にはあたらないとしています。日本としては去年12月から韓国との局長級の政策対話を再開させたうえで、韓国側の対応が実際に改善されるのかを見極めようとしていただけに、WTOでの争いに持ち込んだ韓国に不信感を強めています。さらにWTOをめぐっては、もうひとつ、日本にとって気になる動きがあるんです。

Q 気になる動きですか?

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A 実は、来月末に退任するWTOのトップ・事務局長の後任選びに韓国のユ・ミョンヒ通商交渉本部長が名乗りを上げたのです。ユ本部長は、韓国の通商交渉の最前線にたち、日本の措置に対しては「太平洋戦争中の「徴用」をめぐる韓国の裁判と関連した政治的な動機に基づくものだ」と日本を激しく批判していました。WTOの事務局長は、個別の係争案件に介入することはありませんが、貿易の自由化に向けた国際的な話し合いの枠組みをどうつくるかといった議論を主導する立場にあります。このため日本政府の中には、韓国が有利になるようにWTOが政治利用されかねないと警戒する声が上がっています。さらにいま世界は、新型コロナウイルスの影響で、貿易量が減少し、各国はむしろ協力して自由貿易を維持すべきだという声も聴かれます。輸出管理をめぐる日韓の争いが、誰も得しない争いに持ち込まれることで、両国の経済へおよぼす悪影響が懸念されます。

(神子田 章博 解説委員)

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