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「防衛白書、感染拡大で中国の宣伝活動に警戒」(ここに注目!)

梶原 崇幹  解説委員

ことしの防衛白書がまとまり、この中では、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴って、中国などが、影響力を拡大しようと、大規模な宣伝工作を行っている可能性が触れられています。

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Q)外国の「宣伝工作」というと、安全保障とはあまり関係がないようにもみえますが、なぜ防衛白書に盛り込まれたのでしょうか。

A)安全保障では、軍事力だけでなく、自国に有利な世論形成も重要な戦術ととらえられているからなんです。
白書では、「中国などは、感染が拡大している国々に対し、偽情報の流布を含む宣伝工作を行っているとの指摘がある」としたうえで、「感染拡大は、影響力の拡大を目指した国家間の競争を顕在化させる」と警戒感を示しています。

Q)具体的には、中国のどのような活動を念頭に置いているのでしょうか。

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A)白書には具体的には書かれていませんが、防衛省によりますと、中国は感染拡大に伴って、ヨーロッパでSNSを使った大規模なプロパガンダを行ったようだとしています。実際、EU=ヨーロッパ連合の外務省にあたる欧州対外活動庁(EEAS)は、域内での偽情報に関するリポートをまとめました。(EEAS SPECIAL REPORT UPDATE: SHORT ASSESSMENT OF NARRATIVES AND DISINFORMATION AROUND THE COVID-19/CORONAVIRUS PANDEMIC)
その中で引用された調査によりますと、中国は、ことし3月、感染拡大に苦しむイタリアに医薬品などを送った際、ツイッター上で、中国との関係を評価するツイートと、EUの支援の少なさを批判するツイートを大量に投稿したということです。
イタリアの世論調査会社によりますと、中国を友好的だと思う人が、ことし1月には10%でしたが、3月には52%に急上昇した一方、EUを信頼するという人が、去年の9月には42%だったのが、ことし3月には27%に落ちたということです。(イタリア世論調査会社SWC調べ、前掲EEASリポート引用)
一方、中国は、医療支援をめぐって、「誠実な思いからであり、世界の主導権を握ろうとしているという指摘はあたらない」と反論しています。

Q)日本がこうした活動の標的になる可能性はないのでしょうか。

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A)日本では、防衛省や外務省、警察、公安調査庁などがそれぞれ情報の収集・分析にあたり、必要な情報は、外交・安全保障政策の総合調整にあたる国家安全保障局に上げることになっています。
政府関係者は、今後、例えば、米中の対立が激しさを増し、日本が、アメリカから、中国との経済的な結びつきを大幅に弱めるよう求められる事態になった場合、中国から活動が行われる可能性は否定できないと指摘しています。
ただ、感染拡大が続き国際社会でさまざまな情報が飛び交う中、宣伝工作を受けているのか、見極めるのは、実際には難しく、日本は、アメリカやEUとどう連携し、対応していくのかが、課題となっています。

(梶原 崇幹 解説委員)

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